「とりあえず俺はノドが渇いたぞ!・・・え〜い、これ、飲んでしまえ〜ぃ!」
「ダメダメ!何やってんの、こんなとこで!」
ヤケを起こした酒井が一升瓶のフタをはずそうとするのを、北山が必死に食い止める。
「あ、れ・・・?」
「あ゛ぁ?どうした黒沢?」
「これ・・・」
黒沢が、風に舞っている小さな白を掴もうと空に向け手を伸ばしている。
それを見た村上も、同じように手で白を追う。
身長・運動神経の両面で“少々”勝(まさ)っている村上が、チーターこと水前寺清子的に手を素早く握ると、その白はうまくその中に収まった。
ゆっくり広げる手のひらを全員で覗き込む。
「!・・・桜っ・・・?!!」
手のひらの上の花びらは、再び風に乗ってヒラヒラと舞いながらどこかへと飛んでいってしまった。
「もしかして・・・近い?」
「探せ!」
あんなに帰りたがっていた村上が声を上げる。
5人で首をしきりに動かしながら目を凝らした。
「あっ、た・・・?」
安岡が指差す方向、ゆるいカーブの登り坂の数百メートルほど向こう。
緑の木々の中に隠れるように、ひっそりと佇むピンクが―――
「ホントだ・・・すごい・・・」
北山が目を見開き、ぼそりと呟く。
「・・・俺っ、見てくる!」
黒沢が桜に向かって駆け出していったのをキッカケに、皆一斉に走り出した。