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山の斜面を切り開いて造られた、新興住宅地の真っただ中。
5人は、ゼェゼェと息を荒げて坂道を延々のぼり続けていた。

東の空はすでに真っ暗で、チラホラと星も瞬き始めている。

「・・・もうさ、マジ帰ろうぜ〜?」
「ホントだよ。全然見当たらないじゃない・・・」
秘書課との飲み会がすでに手中にある村上・北山は、もう使命を終えたとばかりに早々にギブアップ発言。

「え〜?断念するんですかい?せ〜っかく重たい一升瓶下げてここまで来たのに、アンタたちっ、そんなカンタンにあきらめようっておっしゃるんですかいっ・・・」
「たぶんもう着くよ〜・・・たぶん・・・」
自腹を切った酒を早く飲みたくて仕方がない酒井と、桜見たさにあきらめきれない黒沢。

そして、

「黒沢さん、何を根拠にそんな・・・」
多忙ななか、何の得もなく連れて来られた専務・安岡。

「もう、やめやめやめ!終了!俺は帰るぞ!」

クルリと踵を返し、坂を下っていく村上を北山が引き留める。

「ちょっと!あの距離、また歩いて戻るつもり?」
「・・・あ〜っ、くそっ!」

村上はイライラッとした様子で少し長めの髪をグシャグシャッと掻き混ぜた。

「・・・車、呼ぼうか。」
安岡が4人に声をかける。

「嗚呼、俺の桜ぁ〜・・・」
「嗚呼、俺の酒ぇ〜・・・」
黒沢と酒井がヒザに手を当ててガックリと項垂れる。

早速携帯を取り出した安岡は、どこかへ電話をかけ、用件のみを伝えてすぐに切った。


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