「ないない。あり得ない。」
「お前ひとり行って探してこいよ。で明日結果報告してくれりゃいいから。な?はい、この話は終わり、な。」
北山と村上はトレーに手をかけ、逃げるように席を立とうとした。
「なぁ、頼むよ〜!一緒に探してくれたら、秘書課の女の子たちとの飲み会、セッティングしてやるからさぁ〜!」
黒沢の交換条件に鋭く反応したふたりは、中腰のまま動きを止める。
「く、黒沢・・・それは〜、ホントか?」
「当たり前じゃん!こう見えて秘書課はみんな仲よかったからね。この季節なら歓迎会に混ぜてもらえるかも!」
「北山・・・今すぐお前のその長けた腕で、黒沢の少ない情報からその『隠れた名所』とやらを、なんとしてでも見つけ出してくれ。できるか?」
「うん、やってみる。」
「俺は専務を誘ってみる。こいつの子守りできるのはあの人ぐらいだからな。」
「『子守り』って・・・専務の方が年下でしょ。」
村上の暴言に北山が苦笑を浮かべる。
「じゃあ聞くが、お前がこいつの面倒見てくれんのか?」
「・・・専務の方、頼んだよ・・・」
「おぅ、まかしとけ。・・・酒井は、しばらく黒沢あやしとけ。」
「ぷはぁ!今日も元気だ、カレーがうまい!・・・って今何か言いました?ん?」
村上と北山は、慌ただしく去っていった―――
「やった〜!♪さぁ〜くぅ〜らぁっ、さぁ〜くぅ〜らぁっ、い〜ま咲ぁ〜き〜ほぉ〜こぉ〜る〜・・・」
早くも幻の桜に思いを馳せる黒沢と、
「明日の『本日のカレー』って何だ?」
早くも明日のランチに思いを馳せる酒井を席に残して―――