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「お、安岡出て〜。」

村上が、電話に一番近い場所にいた安岡に指示を出す。

「はいよ〜。・・・はい、もしもし、エスコートビル管理人室ですが〜・・・はい?あ、え?・・・あ、はい、劇団シアトリカル事務所でもありますけど・・・。
・・・はい・・・はい・・・・・はい・・・・・・・・・えぇぇぇぇぇぇええぇぇぇ〜〜〜っっっ?!!!」

突如響き渡る安岡の叫び。
すかさず酒井が「うるさいよ!」とつっこむ。
お笑い出身だけに、ツッコミのスピードは誰にも負けない。

「どうした?」

村上の問いかけに安岡が「す、すいません、ちょ、ちょっと待ってくださいね!」と断りを入れ、耳から外した受話器の下部を手で覆う。

「て、てつっ!なんか、ワケわかんないこと言ってる・・・」
「ちょ、変われ。」

村上が電話に向かい、安岡から受話器を受け取る。
主宰者としての出番らしい。

「お電話変わりました。・・・はい。・・・」

受話器を耳を当て相手の話をきく村上は、安岡のように叫びこそはしなかったが、次第に返事の声が震え、ヒザがガクガクと小さく揺れ始めた。
その横では、安岡がまだ小声で「え〜、マジで?」を連呼している。
そんなふたりの異変を、3人が唖然として見つめている。

「・・・はい。わかりました・・・こ、こちらこそ、よろしくお願いします。・・・はい、失礼しま〜す・・・」

ガチャ。

「な、どうしたんだよ村上〜・・・一体誰から?」
「俺らの前回の公演見てくれた、って人から・・・」
「その人が、何の用?」
「なんかさぁ〜、その人が経営する単館系のミニシアター(映画館)で流すマナームービーを作ってほしい、って・・・俺たちに・・・」
「えぇぇ〜〜〜?!」

今度は黒沢・酒井・北山が大声で驚く。

「ホ、ホントですかそれ?!」
「ホントだろ。だって前回の公演の感想も的確だったし、ウソじゃねぇよ。」
「こんな無名の劇団に?!いいの?」
「いいんじゃない?やってやろうじゃないの。」

これは滅多とないチャンス。
5人はひとまず次回公演の稽古を後回しにして、早速マナームービーの制作に取りかかることにした。

 

マナームービーは、尺の関係上、短い時間でインパクトを与え、かつ、伝えるべきことはしっかり伝える必要がある。
よって、コント台本を何本も書き上げてきた酒井が担当することとなった。

音楽は、いつものとおり北山が担当。
古い喜劇映画のようなコミカルなメロディを作り上げた。

撮影場所は、依頼者が経営するミニシアターを借りることに。
ただし映画上映中は撮影できないので、オープン前の早朝、レイトショー終了後の深夜に撮影が行われた。

さて、その出来映えは いかに・・・


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