「ほらお前らも笑ってねぇで早く脱げよ。昼メシ食わねぇと午後の部始まっちゃうぜ?」
「うん、そうだね。早く食べちゃおう。」
ブラックが頭部を脱ぐと、レッドとホワイトも続いた。
「あ〜、暑かったぁ〜・・・」
「あ、さっきの司会の!」
ホワイトの中の人は、ショー開演前に出てきた水色ポロシャツの司会者だった。
「そうなんだよ、実は俺、ホワイト兼司会なんだよね〜。ほら、今不景気でしょ?カツカツの人員でやってるから。」
「おい、安岡、お前ウソつくなよな。お前ホワイトになった初日、暑さでショー終わって舞台から捌(は)けたと同時に脱水症状でぶっ倒れたんだろ。
だから仕方なく司会をお前にまかせて、スーツ着る時間を少しでも短くできるようにしてるだけじゃねぇか。」
たしかに元パーくんの言うとおり、安岡と呼ばれたホワイトの髪からは尋常じゃないほど汗の雫が滴っている。
顔も、洗顔後みたいにビショビショだ。
「あ、あの、タオルどうぞ・・・?」
「あっ、あらっ太くんアリガト!」
俺は安岡に控え室に大量に用意されている洗いたてのタオルを渡した。
安岡はフロ上がりのようにアタマからタオルを被り、シャカシャカしながらイスに座り、弁当に手をつけた。
「そんなみんなしてヤイヤイ言うけどさぁ〜、仕方ないでしょ〜、俺汗っかきなんだから!」
「ヤス、戦闘員に戻ったら?あのマスクの方が通気性いいし。」
「え〜っ、『ワルモノ』やだよ!『イイモノ』がいいの!
だってまだ『イイモノ』になってからまだ2週間しか経ってないんだよ?『はい、そうですか』って降りるワケにはいかないよ!」
「お前が汗かきなせいで、わざわざ北山が台本書き直したんだぞ?」
「わかってるけどぉ!アトラスになりたての新人なんだからさぁ、それぐらい優遇してくれてもいいじゃ〜ん・・・」
「優遇されてる上に、司会であんな頻繁に噛むとか、あり得ないよな〜?」
首から下だけ普通の人間じゃない4人が、昼食として用意された弁当をパクつきながら話している光景は正直この世のものとは思えない。
目と耳はそれを捉えながら、俺も紙製の弁当箱のフタを開けた。
「お、そうだ、あらっ太くん。」
元パーくんに声をかけられ、口の中のものを飲み込んで返事する。
「あ、はい、な、何スか・・・?」
「これも何かの縁だ。自己紹介しとくよ。俺、村上哲也。今大学の3年。」
「へぇ〜、大学のぉ〜・・・・・・・・・ええ〜っ?!おっ、俺と同い年〜ぃ?!お前老けてんな!」
軽くスルーしかけたコトバに驚くべき事実が潜んでいることに気づき、思わず立ち上がって叫んでしまった。
「うっせ!お前が童顔なだけだろうが!」
「ということは、パーくんに入ってた時は・・・」
「高校の時のバイト。」
「マジ?!老けた高校生〜・・・」
「うっせ、っつ〜の!」
「てっちゃんは、このショーのメンバーの取り仕切るリーダーみたいな役割もしてくれてるんだよ。」
イラつく村上に代わり、ブラックが説明をしてくれた。
「え、悪の総統がリーダーとか・・・」
「この人アレなんです、2ヶ月前に仕事あんのに家で爆睡しててスッポかしたんですよ。
しかも2日連続。それが原因でレッド役から降ろされたんですよ。」
「うるせぇな、過去のことはいいだろ?」
レッドのコトバに、村上がムスッとした表情を浮かべて白メシを掻き込んだ。