控え室のドアノブを握ったまま、俺は動きを止めた。
何やら中から騒々しい声が聞こえる。
何だろう?
首を傾げながらドアを開ける。
控え室の中では、さっきステージにいたアトラスとデスウルフがしゃべっていた。
「あ、あらっ太くんだ!」
ホワイトが地声で叫んだもんだから、思わずホワイトを二度見してしまった。
「お、あらっ太くん。お前仕事もしないでずっと俺らのショー見てたよな。」
デスウルフのコトバに、アタマを掻きながらすいませんとお辞儀する。
「もう控え室なんだし、しゃべっても平気ですよ?」
レッドのコトバに、傍らにいたブラックがクスクス笑う。
顔は仮面に包まれていて笑ってるかどうか見えないけど。
俺のポリシーとして、着ぐるみを着ているうちは、あらっ太くんとして振る舞うことにしている。
脱いでようやく本来の俺に戻す―――そうすることで気持ちの切り替えがしやすくなるからだ。
「さぁて。メシでも食うか。」
そう言って、デスウルフが頭部の被り物を外した。
「・・・あ〜〜〜っ!」
まだあらっ太くんのままの姿なのに、普通に声を出してしまった。
なぜなら、デスウルフの中身は・・・
「ワン田パーくん!」
「あ?何で知ってんだ、俺がパーくんに入ってたのを。」
「俺っ・・・俺です!」
俺は自分の・・・いや、あらっ太くんの頭部を外した。
「・・・・・・誰だお前。」
「あのっ、風邪で倒れたでしょ!俺、その時の代役です!」
「・・・あぁ〜、あの時の。」
「あのっ!パーくんの着ぐるみ、すっごくクサかったんですけど!あれ何なんですか!」
「知るか!俺が入った時にはすでにクサかったんだっつ〜の!」
現デスウルフ・元パーくんと俺のやりとりを聞いて、アトラス3人組がゲラゲラ笑っている。