「で、俺がぁ、村上さんと交代でデスウルフからレッドになりました、大学2年、酒井雄二です。どぞよろしく〜。」
箸を持った右手を挙手し、レッドが自己紹介。
左手に持っている弁当箱は、早くも食い終わっている・・・。
「ホントはリーダーの役職も酒井さんでいいんじゃないかと思うんだけどさぁ〜。」
安岡の嘆きのようなひとことに、酒井は「いやいや、とんでもない!」と恐縮。
レッドとは思えない腰の低さだ。
「で、僕は、北山陽一。雄二と同じく大学2年。
『戦闘員でいいや』ぐらいの軽いキモチで始めたんですけど、アトラスが放送開始になったのを機にブラックに抜擢されまして。」
「北山は戦闘員の頃から台本も書いてくれてるんだ。」
酒井が北山の紹介の補足をしてくれる。
さっき台本書き直したとかって話の時にも、そんなようなことを言ってた気がする。
「は〜い、ホワイトやってます、安岡優、大学1年です〜。」
安岡はそう言いながら額を伝った汗をタオルで拭った。
安岡の名字は、さっきから会話に出ているからすでにインプットされている。
「ヤスはちょっと前にこのバイト始めたばかりなんだ。
通常、初めのうちは戦闘員の役をして、ある程度スキルと実績を積み重ねてから上の役に上がっていくんだ。
だけど安岡はすでに戦闘員の中で浮いちゃうほどアクションがうまくて。2週間前に異例のホワイト昇格が決まったんだよ。」
「そうなんだよね〜!アクションは得意なんだけど、ほら、いかせんせん汗っかきなもんでね〜!」
北山のコトバに照れたのをごまかすように、安岡はわざとらしく汗を拭う。
「で、あらっ太くんは?」
「あ、俺?俺は、黒・・・」
「もう『あらっ太くん』でいいんじゃね?脱いでもさほど変わんねぇし。」
「なにっ・・・?!」
老けてるって言いすぎたからか、思わぬ反撃を受けた・・・!ショック!
「で?あらっ太くんは、何でこの仕事をされてるんです?」
酒井が俺にそう尋ねてきた。
「えと、俺は〜、高校の時にパーくんに3日だけ代理で入った時に『ぬいぐるみの中に入るのっておもしろいな〜』と思ってね。
そのあと、そういう仕事に就く機会がなかったんだけど、あらったくんの着ぐるみの中の人を募集してるのをたまたま見つけて。
面接受けて、それで今ご覧のとおり、ってカンジかな。」
「なるほど〜。着ぐるみ好きなんだね〜。」
「うん。好きだよ。」
「あ、そうだ!あらっ太くんさん。」
北山が何かを思い出したかのように俺を呼ぶ。
・・・年上だけど「あらっ太くんさん」はちょっとまどろっこしい。
「アグネス・チャンさん」みたいな。
あ、あれは名前だからいいのか?