←BACK


子供たち、たまには大人たちの声に応えながら園内を練り歩いていたら、ショーが行われる「なかよし広場」にたどり着いた。
簡易ステージの前の観覧スペースは満員御礼。

あらっ太くんの口の中から、すぐ側にある大きな時計を見上げる。
11時まであと2分、か。

舞台袖からステージに、水色のポロシャツ、白いズボンの青年が現れた。
どうやらこのショーの前説をする司会者のようだ。

「よいこのみんな〜!こ〜んに〜ちわ〜!」

司会者が明るくアイサツして手を耳に翳すと、子供たちの元気一杯なアイサツがこだました。

「は〜い、元気にごアイサツできましたね〜!さて、もうすぐ『激闘戦隊アトラス』が始まりま〜す!が、その前に、いくつか守ってほしいことがありま〜す。」

司会者はショーの妨げになる行為をしないようにクギを刺して舞台袖へと消えていった。

しばらくして、戦隊モノ独特のハデなオープニングテーマが流れた途端、ちびっこ客が総立ちになる。
テーマの1番が終わったところで曲がフェイドアウトしていき、代わりにおどろおどろしい音楽が流れてきた。

さっき青年が登場したのと反対側の舞台袖から、悪の総統「デスウルフ」が出てきた。
黒い布のようなものでアタマから足首まですっぽり被っており、マンガに出てくる狼をさらに恐ろしくしたような顔だけが布から見えている。

『やぁ、諸君。ゴキゲンいかがかな?』

テープの声優さんの声に合わせて身振り手振りをすることで、着ぐるみのデスウルフがちゃんと話しているように見える。
うまい・・・。

『さて、この遊園地はたった今、我らデスウルフ軍の支配下となった。ここにいる君たちもすでに我々に完全に包囲されている!』
デスウルフがそう叫びながら、手にしている木製の杖のようなモノを振り上げた。

『ジ〜!』『ジ〜!』『ジ〜!』
真っ黒な全身タイツに身を包んだデスウルフ軍の下っぱ戦闘員が10人ほど飛び出してきて、観客席を取り囲んだ。

『君たちはもうここから一歩も動けないし帰れないぞ?覚悟はいいな?あ〜っはっはっはっ!』

そこここでちびっこたちの悲鳴が上がる。
中には泣き出す子も・・・

『泣いてもムダだぞ?!アトラスは今、他の場所でそれぞれ闘っている最中だからな。
君たちを助けられないってワケだ。あ〜っはっはっはっ!』

恐怖心煽りまくりだ。
トラウマにならなければいいが。


→NEXT

→コメディTOP