3人と一緒にバックヤードに戻ると、デスウルフの格好のままの村上がいた。
「よぅ、お疲れ。」
「村上も、お疲れ。・・・どうだった?あらっ太くん、ちゃんとできてた?」
「上出来。」
そう言って村上は親指を立てた。
「でも、脇腹まだ痛ぇよ・・・お前マジで蹴ったろ?」
「えぇっ、あっ、ゴメン!そんなつもりはなかったんだけど・・・!」
「ズッシリきた・・・」
「ごめんごめん!」
ペコペコとアタマを下げて平謝り。
着ぐるみの重量を計算に入れ忘れていた・・・。
「でもさ、いつもと違うアトラスショーができて、いい思い出になったよ。ありがとうな。」
「いやいや!こちらこそ!あらっ太くん的にもいい体験になったよ。ありがとう。酒井も北山も安岡も、ありがとう。」
「こちらこそ!」
「俺らも楽しかったし。なぁ?」
「うん!」
みんなで握手して今日の健闘を讃え合う。
「また、みんなで来てよ。ここのお客さん、みんなのショーを待ってるから。」
「もちろんだよ!」
「あらっ太くんさんの出番も、特別に用意しておきますから。」
「えぇ?!い、いいの?!」
「今日の盛り上がりを見てたら、あらっ太くんを登場させない手はないでしょうよ。」
「わかった、楽しみにしてる!・・・あ、次のシリーズは4人でメインやるんだろ?」
「恐らくな。」
「じゃあ村上、ワルモノ卒業?・・・次は村上をやっつけられないのかぁ・・・残念・・・」
「ちょ、お前なぁ・・・」
俺と村上のやりとりに、3人から笑いが起こった。
俺にとってもあらっ太くんにとっても初めての体験となったヒーローショー。
来てくれたたくさんのお客さんからも大好評で、「もう一度見たい」という声がパークにたくさん届いた。
さらにウワサがウワサを呼び、あの4人と俺がやるショーがある日の来場者数はウナギ昇りだ。
見た目は全然違う着ぐるみだけど、見てくれるお客さんに身振り手振りで何かを伝えるって意味では同志だ。
普段は別のステージで。競演する時は同じステージで。
これからも5人で、たくさんの人々に元気や勇気、希望、夢・・・いろんなものを配っていけたらいいなぁ。
「あらっ太く〜ん、そろそろ出番だよ〜!」
(は〜い!)
そして今日も、変わらぬ笑顔でパークを闊歩しているあらっ太くんの中で、俺も一緒に笑顔で歩み続けている。
End.