『あとはお前だけだ!デスウルフ!』
アトラス・レッドが舞台から、ツリーの下に立つデスウルフを指差す。
『今日こそやっつけてやる!』
『そうはいくかな?』
デスウルフがツリーに向かって杖を振り下ろした。
不穏なメロディと共にツリーにドクロのマークがユラユラと浮かび上がった。
スポットライトの前にドクロ型に切り抜いた紙をかざし揺らす手法を使って、うまくおどろおどろしさを出している。
『レッド・ファイア・ソ〜ド!』
『ブラック・サンダ〜・ソ〜ド!』
『ホワイト・フラッシュ・ソ〜ド!』
アトラスの3人が武器を持ち、ツリーの下にいるデスウルフにかかっていく。
デスウルフも負けてはいない。
杖で3人の攻撃に必死に応戦している。
「アトラス頑張って〜!」
司会者が声援を送ると、固唾を飲んで見入っていたちびっこたちからも応援の声が上がる。
俺も両手の拳を握るアクションで応援だ。
アトラスとデスウルフは殺陣をしながら自然な流れで舞台へと戻ってきた。
『よし、こうなったら!』
『いくぞ!』
『おぅ!』
レッドが振り上げた剣に、ブラックとホワイトが剣を寄せる。
『アトラ〜ス・ア〜ス・アタッ〜ク!』
合体技で放たれた光線を、デスウルフが杖を盾にして受け止める。
しかし、そのカラダがじわりじわり、後退する。
俺はチャンスとばかりに、片足をダンッと踏み下ろした。
ダンッ・・・ダンッ・・・ダンッ・・・、ダンッ、ダンッ、ダンッ、ダン、ダン、ダン、ダンダンダンダンダンダンっ!
(スウィート・チン・ミュージックっ!!)
『うわぁ〜っ!!』
デスウルフのサイドから、俺はHBK(ショーン・マイケルズ)ばりのトラースキックを見舞った。
着ぐるみの脚の長さの問題で、アゴではなく横っパラにしか当たらなかったのはご愛敬だ。
デスウルフは、アトラス・アース・アタックと俺のスウィート・チン・ミュージックを同時に食らって、見事に吹っ飛んだ。
ツリーに浮かんだドクロのマークもゆっくりと消滅していった。
『やったぁ!』
『そ、そんなバカな!・・・くそぅ、覚えておれ〜っ!』
そう言い残し、デスウルフは舞台袖へと這う這うの体(ほうほうのてい)で逃げていった。