もうすぐ4時半。
すでに辺りは薄暗くなり始めている。
舞台袖からチラリと観客席を覗く。
こんな寒い冬の夕暮れに、たくさんの人が「なかよし広場」に集まってくれている。ありがたいことだ。
まぁ、俺は着ぐるみ着てるから全然寒くないけどね。
さぁ、北山が書き下ろしたサプライズ満載のクリスマスショーが、間もなく始まる―――
真っ赤なベンチコートに真っ赤なサンタ帽を被った司会者役の女の子が舞台袖から登場すると、拍手が起こった。
「みなさ〜ん!こ〜んば〜んわ〜☆」
「こ〜んば〜んわ〜!」
ちびっこたちの元気な返事がなかよし広場に響く。
「それではみなさまお待ちかね!この、大きなツリーのイルミネーションを点灯させたいと思いま〜す!
スイッチを押してくれるのはこの方!あらっ太くんでぇ〜すっ☆」
司会者の呼びかけに、俺、あらっ太くんが登場。
ピョコピョコピョコっと跳ねるように歩くと、サンタ帽の先の白いポンポンが揺れる。
舞台の中心に立つと、正面上方からのスポットライトに照らされた。
うわぁ〜、すっごいまぶしいんだな、これ。
「は〜い、ではココにあるスイッチをあらっ太くんに押してもらいましょう!
カウントダウンしますので、みなさんもご一緒にお願いしま〜す☆」
「は〜い!」
「いいですか〜?では、5から行きましょう!・・・せ〜のっ、5〜!」
5を数えたところで、なかよし広場の周辺にある照明のすべてが消えた。
ざわつく客席。
そこへ1本のスポットライトがツリーの元へと伸びていく。
明かりの先は・・・デスウルフ!!
「でっ、デスウルフっ?!!なんでこんなところに・・・?!!」
司会者が驚きの声を上げる。
デスウルフが杖を振り上げると、ツリーの背後から続々と戦闘員が飛び出してきた。
そしてあっという間にツリーを取り囲み、手にした斧をツリーの根元に向かって一斉に振り下ろした。
『ジ〜!』『ジ〜!』『ジ〜!』
『あ〜っはっはっはっ!』
「あっ、ダメ!そのツリーは今から明かりを点すんだからっ!倒さないで!」
実はこの戦闘員とデスウルフの声、いつも使ってるショーの使い回しなのだ。
それ以外のところは、司会者のセリフでうまくフォローしている。
「・・・あぁっ、どうしましょう、私たちのツリーが・・・!」
客席から「ダメ〜!!」と悲鳴に近いちびっこの声が上がる。
俺もあたふたとうろたえる動きをした。