そしてついに迎えた12月25日。クリスマス。
パーク内は、どこもかしこもクリスマス仕様。
従業員はみな、トナカイの角をアタマにつけている。
なかよし広場の脇には、大きなツリー。
枝に巻きつけられたLEDの小さなランプが、点灯する瞬間を今か今かと待ちわびている。
そして俺、あらっ太くんも、今日は赤いサンタ帽をかぶって準備万端。
どう?かわいいでしょ☆
・・・なんちゃって。
♪ぴんぽんぱんぽ〜ん!
音を聞くポーズをとって耳を澄ます。
子供たちも何ごとかとキョロキョロとしている。
「本日、午後4時半より、なかよし広場におきまして『クリスマスツリー点灯式』が開催されます。・・・」
ちびっこたちはみな、「ツリーの点灯式だって〜。」「見た〜い」と口々に言っている。
・・・よしよし、みんな食いついてるみたいだな。
俺も胸の前で小さくパチパチと拍手して、点灯式への期待を表現した。
さて、そろそろ“点灯式”の用意をしにバックヤードに戻ろうか。
控え室に戻ると、アトラスチームの4人が、既に到着していた。
「よぅ、あらっ太くん久しぶり。台本ちゃんと読んでくれたか?」
うんうんと頷き、指でOKを作る。
「戦闘員はあとから来るから。それと、司会は5人戦隊モノのピンクに入ってる女の子に頼んだ。彼氏にフラれてヒマしてるらしいからさぁ。」
「こらっ、余計なこと言いなさんなっ!本人今いないからいいようなものの!」
「いや、この人、本人を目の前にしても平気でそういうコト言っちゃうからすっごい恐いんだよ〜!」
「彼女の前でそういうことゼッタイ言わないでよ?怒らせて帰っちゃったら、今日のショー中止だよ?わかってる?」
村上の説明に3人が総攻撃。
村上って、ある意味デスウルフよりキケンな存在だな・・・
「よしっ、じゃあそろそろ通し稽古しようぜ?最初で最後の、な。」
「おぅ!」
俺も声は出さないけど親指を立ててOKの合図を出した。