「と、飛んでる・・・?!」
「んなアホな・・・!」
「とにかく、俺、助けてくる!」
ぎこちなく大きく翼を振った北山は、すぐにコツを掴んだようにうまく羽ばたき、上へ上へと飛んでいく。
「北山!」
「ちょっ、待ちなさいってば!」
「ひとりだけで助けるなんて危険すぎるよ!」
「俺らも!」
舞い上がる北山を追って手を伸ばす4人の翼が、向かい風に乗る。
「うわぁっ?!」
「まさか?!」
「浮いた!」
「ウソだろ?!」
ここで驚いている場合ではない。
4人も背中の翼を大きく扇ぐように動かした。
4人のカラダは空に向かってグングンと昇っていく。
「うひゃぁっ、たっ、高ぇ〜っ!」
「テツ、下 見ちゃダメだってば!」
「♪む〜か〜し、ギリシア〜のイカロ〜ス〜は〜・・・」
「酒井、その歌やめてよ!不吉すぎる!」
やいやい言いながらある程度の高さまで上がると、今にもビルの屋上の角から飛び降りそうになっている少年と、その腕を掴んで必死に止めようとしている北山の姿が目に入った。
「北山ひとりじゃ支えきれねぇよ!早くしないとふたりもろとも落ちちまう!行くぞ!」
4人はその現場へ急行する。
「離せ!」
「イヤ、だっ・・・!」
揉み合っている間に少年が片足をガクンと踏み外し、その反動でふたりのカラダは急降下してゆく。
「離せって言ってんだろ!」
「お願い!止まって!」
北山は目一杯翼を羽ばたかせるが、人間ふたり分の体重はさすがに支えられない。
みるみるうちに地面と人々の悲鳴が近づいてくる。
「もうダメだっ!」
北山が恐怖で目をつむったその時。
「・・・間に合った!」
地面から数メートルのところで、4人がふたりのカラダを受け止めた。
やじ馬の悲鳴が大歓声に変わった。