「降りる?」
「いや、今降りたらまずいだろ。どっか目立たない場所に移動しようぜ。」
「はぁ・・・できれば高くないとこがいいよ・・・」
安堵のため息をついた北山は、そう提案した。
「わかった、行こう。」
体格のいい村上と酒井が少年を支え、黒沢と安岡が北山を気遣いながら再び空へ舞い上がる。
突然、少年がジタバタと暴れ出した。
「な・・・何だよお前ら!何で助けたんだよ!」
「はいはい、じっとしてなさいよ〜。」
「お前ら何で飛んでるんだよ!気味悪いんだよ!」
「お〜、俺もそう思うわ〜。」
酒井と村上が少年をしっかりと掴んだまま、彼の怒りを軽くいなしている。
いきなり翼を背中につけて飛ぶ男が現れ、揉み合っているうちに屋上から落下し、間一髪のところで“翼男”の仲間みたいなのがさらに4人も登場し・・・
信じられないことの連続で、少年が軽いパニックに陥ってしまうのも当然かもしれない。
「あっ、驚かしてごめんねぇ〜。あやしい者じゃないから、心配しないで。ね?」
「いやいや、あやしいでしょ、どう考えても!飛んじゃってるんだよ?!」
「まぁ、俺たちもまだこの状況を把握できてねぇんだから、驚いて当然だろうな。」
一時の緊迫感も薄れ、すっかりいつもどおりの5人に戻りつつある。
「あ!あそこに降りれないかな?」
安岡が指差すのは・・・
「え!動物園?!」
「だって人いないし門も閉まってるし、休園日なんじゃないの?」
「たしかにそうだけど・・・」
「よし行ってみっか!」
「んもぅ、それ不法侵入ですよ?!いいんすか?!」
「いいんじゃない?たまには。」
「『たまには』って!」
少年を抱えたまま、5人は休園日の動物園へと向かう。
係員のいそうな建物から死角になる場所を推測し、そこへ舞い降りた。
「すげぇ〜・・・動物園なんてホント久しぶりだな〜。」
キリンやゾウなどがのんびりと過ごしているのを横目で見ながら、村上が大きく伸びをする。
「もしかして・・・今だったらオリの中にも入れるんじゃないの?!」
「動物を刺激するようなコトしなさんな!」
飛び上がろうとする黒沢を、酒井が焦った表情を浮かべて引き止めた。