「では、撮影行きましょう!」
開始時間を遅らせたこともあってか、カメラも照明もすでにスタンバイ完了している。
すぐに撮影が始まった。
写真撮影の仕事を数多くこなしてきている5人は、この日もつつがなく撮影を終えた。
最後には翼の存在を忘れてしまうほどだ。
撮影の次は、記者によるインタビューだ。
今度のニューアルバムの内容や手ごたえ、こだわりの部分などを語る。
「今回の衣装は翼が特徴的ですけども・・・?」
「あっ、えと、これは〜・・・取材用です!」
「え?」
「あ、いや、あの〜・・・アルバムジャケットの衣装には羽ついてないんですけどね。」
「アルバムに収録されている『Sky High』や『青い鳥』などからイメージを広げて・・・」
「みんなでアイデアを出し合って『今度のキャンペーンはこれでいこうか』ってコトで・・・」
「なるほど〜。」
苦しまぎれな返答だったが、記者は特段違和感を覚えなかったらしい。
話題は自然にツアーの話へと移行していった。
「何とか乗り切ったな!」
「一時はどうなるかと思ったよぉ〜。」
「次の仕事も撮影だったな?」
「うん。別のスタジオでね。」
「ということは・・・移動・・・?」
「・・・ですよね〜・・・」
5人は仕方なく『羽つきの衣装』のまま車に乗ることにした。
実際に時間が押していたこともあり、イイワケがしやすい。
(とはいえ、時間が押した原因は自分たちにあるワケだが・・・)
「うわっ!い、いつの間に衣装に羽なんてついたんですか・・・?!」
車を回してきたマネージャーが目を真ん丸にして驚いている。
「え?知らなかったの?」
「この前の打ち合わせで決まったじゃん。」
「ちゃんと聞いてた?」
「い、いや、あのっ・・・」
身内には容赦なくウソをつく5人であった。
「じ、じゃあ、出発しましょうか!乗ってください!」
「は〜い。」
いつもはちょうどいいサイズの大型バンも、翼が生えた状態では・・・
「よいっしょ。」
「うわ、ドアに引っかかった!」
「もうちょっと詰めろよぉ〜、ドアに羽挟んだら痛いだ・・・ふががっ!ふがふがっ!」
うっかり不用意なコトバを口走る黒沢の口を、後ろに座っていた村上が急いでフタをする。
「バカっ!怪しまれるようなこと言うな!」
「悪ぃ、つい・・・」
ひそひそとナイショ話が続くなか、車は発進した。