「あ〜!もういろいろ考えるのめんどくさくなってきた!・・・もうさ、そのままいこうよ!」
安岡が投げやりに提案する。
「え、『そのまま』って?どういう意味?」
北山が、意味がわからないといった表情で首を捻る。
「羽を衣装の一部にしちゃう、って意味だよ。」
「・・・・・・・・・えぇ〜?!」
今度は4人で驚きの声を重ねた。
「さ、35前後の大のオトナが5人揃って羽がついた衣装って!イタすぎんだろ!」
痛みが引き、元気になった村上が叫ぶ。
「だって!そうは言ってられないじゃん!これ以上時間も日程も先に延ばせないんだろ?だったら仕方ないじゃん!」
この安岡の意見に真っ先に乗っかったのは黒沢だった。
「でも安岡の案、ちょっとおもしろそうじゃない?やってみようよ。」
「く、黒沢?!」
「せっかく羽生えた、その記念撮影ってことで。おもしろそうじゃん。」
「アンタね、コレ、遊びじゃないんですから!」
「衣装は俺がうま〜くハサミ入れてあげるから!元美術部の腕を信じなよ!」
「その作業に美術部関係なくね?!」
猛反対している村上と酒井。
北山はその横でクスクスと笑っている。
「北山さんは、どう思う?」
「俺は、みんなの意見がまとまったらどっちでもいいよ。」
「お前、うまいこと逃げたな!」
「そういうテツと酒井さんはさ、何か他にいい案あるってワケぇ〜?」
「・・・・・・あの〜、ほら、・・・」
「まだ思いついてねぇけどぉ〜・・・」
「スタッフのみなさん、お昼食べてもうすぐ戻ってくるぞ?どうすんだよ、リーダー村上てつや!」
黒沢に結論を急かされた村上。
「・・・えぇい!もう、好きにしろ、好きに!」
「ばっ、リーダー、何言って・・・」
「よっし!そうと決まったら、俺、みんなが帰ってくるまでにハサミ探してくる!」
安岡が控え室を飛び出していく。
「じゃあ俺は衣装の準備でもするか。北山、手伝って。」
「わかった。」
黒沢と北山が5人分の衣装を広げ、翼を出す切れ目をどの辺にどれぐらいの大きさに切るか、検討を始めた。
「あんまり大きく切ると切れ目が見えちゃうよな?」」
「だいたいこのぐらいの長さで切れば、切れ目も目立たずに羽を出すことができるよ。間違いない。」
「ハサミ、持ってきたよ!」
「でかした!」
安岡が探してきたハサミを手にした黒沢は、躊躇をすることもなく、衣装の後ろ身頃にタテに15センチほどの切れ目を入れてゆく。
「北山、こんなもんでどう?着てみて。」
「うん、いいカンジ。場所もちょうどいいし、痛くない。」