「正直に話してくれてありがとうね。」
唇を噛み締める涙を流す少年に、安岡がハンカチを差し出した。
酒井が少年の肩に手を置き、ぽんぽんと叩いて励ます。
「中学を卒業したら、次は高校・大学があって、社会人になっていくんだ。いじめが一生続くなんてことはない。
この先、いいコトもたくさんあるはずだ。それを経験せずに死ぬなんて、もったいないと思わないか?」
「お前、女の子と付き合ったことある?オンナはいいぞ〜?!」
「俺がせっかくいいコト言ったのに横から台なしにするようなこと言うんじゃない!
・・・コホン、失礼。頼む・・・『自分の命を大切にする』って約束してくれるか?」
酒井がそう尋ねると、少年は小さく頷いた。
みんな一斉に安堵のため息を漏らす。
「じゃあ約束してくれたお礼に、俺らからプレゼント。な?」
5人が少年に贈るプレゼント。
それはもちろん・・・歌だ。
「♪〜♪♪〜♪〜」
新しいアルバルにも収録されている曲を熱唱する。
少年は突然のできごとに呆気にとられていたが、次第に歌の世界に惹き込まれているようだ。
歌詩の一言一句を聴き逃さないように、熱心に聴き入っている。
歌い終わると、少年は「すごい・・・」と言って、5人に拍手を送った。
「他にも聴きたいな・・・ダメ?」
「お安いご用です!」
大盤振舞い、5人は次々と歌を紡ぐ。
少年はさっきまで死のうとしていた思えないほどのいい笑顔で、曲が終わるたび拍手する。
「口でドラムみたいなのの音出すの、すごい・・・」
「あぁ、これか?」
酒井のヒューマンビートボックスに興味を示したらしい。
酒井がアドリブでビートを刻むと、「それ教えて!」と頼んできた。
「もちろん、お安い御用で!」
少年を家に送り届け、別れを告げたと同時に5人の背中に異変が現れた。
「は、羽が消えていってる・・・?!」
みるみるうちに小さくなった翼は、あっという間に消えてしまった。
「な、何だったんだ・・・あれは一体・・・」
「でもよかったぁ〜・・・これで仕事に支障・・・・・・あぁぁあ〜っっ!!」
黒沢の叫び声に、4人は飛び上がるほど驚いた。
「何だよ黒沢!うるせぇなぁ!」
「撮影・・・忘れてない・・・?」
「あ・・・」