「あっ、わかった!」
いきなり叫んだ黒沢が、同時に包丁を豪快に振り下ろした。
「ぅわっ・・・ぶねっ!何やってんすか全く!」
黒沢の突然の居合い切りにより、スイカはパカッという擬音が聞こえそうなほどキレイに2等分に切れた。
途端にウリ科特有の青い香りが辺りに漂う。
「おぉ〜、真っ赤だ〜!」
「瑞々しいね。」
中に鬆(す)も入っておらず、状態も完璧だ。
「で〜、これを〜、半分にして4等分、それをまた半分にして8等分、それをまた半分にしたら・・・」
「ま、待って待って!・・・もしかして・・・5との最小公倍数探してる・・・?」
黒沢のコトバの先を読んだ北山が、黒沢の腕を掴んで阻止した。
「おっ、ご名答!さすが北山だなぁ〜!」
「だっ、ダメですよぅ!こんないいスイカをそんなにちっちゃく切っちゃ!フルーツポンチに入れるんじゃないんだから!
豪快に食ってこそスイカの醍醐味でしょうに!」
「あぁ〜!5等分が〜!」
叫び声を上げる酒井と安岡の肩を同時にポンと叩いた村上がニヤリとした笑みを浮かべた。
その笑顔に、黒沢以外の3人は心の中で『何だかとてもヤな予感がする!』と警鐘を鳴らしたが、村上が動く方が早かった。
黒沢の持つ包丁を横取りし・・・
スパン、スパン!
・・・見事な4等分にしてしまった。
「え・・・もしかして・・・また何かやる気?!」
「え〜、もうやめようよそれ〜!」
『味わって食べたい派』のコトバに、村上は「当たり前だろ。」と門前払い。
「ぅしゃ!やりましょう!何します?しりとりはこの前やりましたしねぇ。」
俄然やる気マンマンな酒井が話を進めていく。
「トランプもやったな。」
「王様ゲーム・・・もやったことある・・・たしか、“大昔”に。」
「じゃんけんもやったような気がするな。たしか“仕事”で。」
村上と酒井が真剣な面持ちで決め方を議論するも、なかなか決まらない。