「しかもこれ、サイズが大きくて、結構お高いらしいんですよ。」
「え、マジ?いくら?」
「1万円です。」
「い、1万円?!」
あまりの高さに、5人同時に値段を叫ぶ。
まさに『逆テレビショッピング状態』である。
「この大きいサイズはひとつしかありませんので、みなさんでどうぞ。スタッフの分は、これより少し小さいサイズのがいくつか届いてますので。はい。」
「はぁ。」
「よく冷えてますんで、ぜひ。あ、ちょっと包丁持ってきますんで、ちょっと待っててくだ・・・」
スタッフが楽屋を出ようと踵を返した時。
「あ、俺包丁1本持ってるよ?」
黒沢が手を挙げ、自分のカバンへと歩いていく。
その様子を見たスタッフは、「あ、じゃあ僕、これで失礼しますね。」と言って、一礼して楽屋から去っていった。
「それにしても、何でンなもん持ってんだお前は!」
「『歌手です』って、全然歌手じゃないから!」
「『包丁一本』ってアンタいつの時代の人間なんだ?!」
村上・安岡・酒井が3人がかりで黒沢に総ツッコミを入れた。
「いやぁ、ここ来る前にね、買い物してたらね、いいのがあったんだよ、いいのが!
このテの包丁で左利き用、初めて見てさ、しかもここ見てよ、ほらコレ!」
「黒ぽん、包丁の説明はいいから!早く切ってよ!」
もたもたと包丁の包装を開けながら説明をする黒沢に、さっきツッコミに参加しなかった北山までもがツッコミを入れる。
「ん、待ってて。一応包丁洗ってくるから。」
ひらひらと右手を振りながら、にこやかな表情で楽屋から出ていく黒沢。
その左手には真新しいむき出しの包丁が。
「・・・き、危険人物・・・」
「なんで箱から包丁取り出して持ってったんだろう・・・」
「笑顔なのが余計に・・・」
「み・・・見なかったことにしよう・・・な?」