たなバトル

 

 

「差し入れで〜す!」

という声とともに、楽屋に運び込まれてきたのは、正方形の段ボールの箱。
スタッフが両手で抱えるようにして、楽屋中央に置かれたテーブルに向かって慎重に歩いてくる。

「何ですか?それ。」
「重いの?」

北山と安岡からの質問に、スタッフが「結構重いですよ。中身は箱を開けてからのお楽しみです。」と言いながら、箱をテーブルの上にゆっくり置いた。

「え、もしかして今から『♪箱の中身は何じゃろな』とかやるんじゃ・・・」
「いや、リアクション芸人じゃないし、カメラも入れずにやる意味が・・・」

少々生真面目なスタッフは酒井のコトバを冗談と取らず、そのまま真に受けて返答した。

箱の中身が気になる5人。
誰が先導したワケでもなかったが、一斉に箱の周りに集まってきた。

「じゃ、開けますよ〜。」
「おぅ。」

スタッフが段ボール箱の上部のテープを剥がし、蓋を左右に開いた。
皆、一斉に箱の中を覗き込む。

中には、黒くて大きな丸い玉がひとつ入っていた。

「・・・ボウリングの玉?」
黒沢が呟く。

「・・・見えなくはないですけど。」
そう返答しながら箱の中に両手を突っ込んだスタッフは、ゆっくりとその玉を持ち上げ、箱の横に置いた。

楽屋の蛍光灯の光に照らされ、ようやくその全貌が明らかになる。

「お、わかった。『でんすけ』じゃん。」
「村上さん、ご名答。そうです。」
「おぉ〜、でけぇ〜。」

『でんすけ』といっても、「デン助劇場」のデン助(大宮敏光)ではない。
ましてやソニーの業務用携帯録音機のことでもない。
スタッフが運び入れた「でんすけ」とはスイカの品種名である。
スイカといえば、緑と黒の縦のラインが特徴だが、このスイカは濃い緑の一色のみ。パッと見は黒かと思ってしまうほどだ。
また、他の品種と比べて甘味が強いのも人気のひとつ。
高い値がつく高級品、まさに「スイカの王様」である。


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