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またまた無人のミーティングルーム。
入って来たのは、作詩に煮詰まった酒井だった。

「お。誰もいない。」

酒井は座るよりも先にミーティングルームの片隅に向かい、コーヒーを淹れた。
「♪コーヒーギフトは〜・・・なんつってな。」

作りたてのコーヒーを手に椅子に座って、フーとため息。

テーブルの上に置かれたお菓子を食べたり。
「ん。ハッピーターンうまい。」

誰かが置いた週刊誌をペラペラめくったり。
「誰だ、袋綴じ開けたヤツは・・・。っていうか、世間はそんなに女子アナのパンチラ・胸チラが好きか?」

酒井はいつの間にか週刊誌に読み入っていた。
そこに書かれていたある記事にインスピレーションが一気にわいてきた。

「ふむ・・・これをテーマに書くとするか。」

と思ったものの・・・

脳内に浮かんだ詩はまだ不安定で、自分に与えられた作業部屋に向かっている間に壊れてしまいそうだった。
「この瓶(=脳)を揺らすと、ニトログリセリン(=詩)が爆発してしまいますよ〜!!」っていう状態・・・とでも言おうか。

とにかく慎重かつスピーディーにその詩をカタチにしなければ。
酒井は、その不安定な状態の詩を一刻でも早く書き写すべく、そこら辺にある紙とペンを掴んで早速ガリガリと書き始めた。

「え〜っと・・・」

ガリガリ、ガリガリ。

「おぅ、いい感じいい感じ。」

ガリ・・・ガリ・・・ガ。

「ちょ、これ、髪ジャマだな・・・」

髪の毛を束ねるゴムは作業部屋へ置いてきてしまった。
しかし取りに行く時間が惜しい。

酒井はペンを持つ手を動かしながら、チラ、チラと辺りを見回した。

「お、これでいいか。」

 

そして30分後。

「・・・よっ、しゃ!できたぞ!ここまで書けたら、後は体裁を整えるだけだな!」

ガッツポーズをとっていると。

ガチャ。

「お疲れさまで・・・ちょっと雄二、それ・・・」
「うぉっ、北山!こ、これはだな・・・」

酒井が慌てるのも無理はない。

なぜなら、酒井は髪の毛をまとめた状態で丸め、北山の音叉をかんざし替わりに刺していたから・・・

「す、すまんな・・・もう、作業終わったから返す。な?」
「作業終わってなくても返してもらうし!」


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