「まぁ村上はすでに買ってくれてるみたいだけど、これは彼女にでもプレゼントしてあげてよ。『遠い約束』とかめっちゃいいと思う。」
黒沢は自分で自分の作品を褒めている自覚がないまま村上に勧めた。
「なんで彼女にお前が作った作品あげなきゃなんねぇんだよ!自分の彼女には自分で作っ・・・」
「へぇ〜!村上、やるじゃん!」
村上は、自らの不用意な発言に、さっき以上に顔を赤らめた。
「はい、村上。とりあえずこれあげるから。はい。」
「こんなクジ、引くんじゃなかった・・・」
村上は無理矢理に持たされた『ぽんソロセット』を手に、壁にもたれてずるずると座り込んだ。
「こ、恐いなぁ・・・」
安岡がビクビクしながら黒沢に皿と抽選券を差し出した。
「は〜い。1回ね。どぞどぞ。」
安岡はツバをごくりと飲み込んで、レバーを回した。
ぽこんっ。
黄玉だ。
♪からんからんから〜ん!
「おめでとうございます!4等賞です〜!」
三度目の当たり鐘が鳴り響く。
「4等はですねぇ〜・・・」
黒沢はフリップのカバーを捲った。
「じゃ〜ん!『4等賞、Kaoru Kurosawa Presents 出張カレー回数券11枚綴り』で〜す!」
「11枚!?いらないいらない!そんなにいらないから!」
安岡は激しく首を横に振った。
「“出張”って?」
北山が疑問に思ったことを口にした。
「これ当てた人の家に行って作るの。」
「いやいやいや!来なくていいってば!」
「いやいや、行かせていただきますよ?主婦業に疲れた奥様方に大好評ですよ?」
「ツアー中だしウチは疲れてないから!」
「その回数券、今日から1年間有効、っていうか期間中に全部使い切らないと罰ゲームあるからね〜。」
「やだやだやだ!ツアー終わってから11枚使い切ろうとしたら、一体どんなペースになんのさ!」
「さぁ〜?それはご自身で考えていただかないと〜。」
「悪夢だ・・・これは悪夢だ・・・」
安岡は長机に手をつき頭を垂れた。