「・・・カレー買ったら引けるんだよね。じゃあお兄さん、カレーください。ライブ前だから八分くらいの量でいいから。」
「は〜い!毎度あり〜!んもぅ、八分だなんて遠慮しなくていいのにぃ〜♪」
北山の注文に、トーカ堂のキタさんのように申し訳なさそうな顔をしていた黒沢の顔がパァっと晴れた。
いそいそと炊飯ジャーから皿にごはんを盛り、カレーを掛けた。
「いや、それ八分というか九分ぐらいじゃな・・・もういいです、はい、それで・・・」
「はい、ぽんカレーと、こちら、抽選券になりま〜す。」
「お、俺もっ、やるっ!こういうのは話のネタとして乗っかかっとくべきだと思う!」
酒井が元気よく挙手した。
「さすが酒井!じゃ、は〜い、カレーと・・・はい、抽選券ね。」
「俺らもやるか、安岡・・・」
「うん・・・」
浮かぬ顔をして黒沢に300円を支払うふたり。
「はぁ〜い。今日は大繁盛だなぁ〜。はっはっはっ。」
楽しそうに高らかに笑う店主の横で、通行の邪魔にならないように廊下の端に並んで黙々と立ち食いする4人。
「はいっ、食べた!引かせてくれ!」
酒井が手を挙げて黒沢に皿を返却した。
「食べるの早っ!!」
何が出るのか興味津々の3人はカレーを食べながら酒井の後ろを追う。
「じゃ、引きます・・・」
ふぅ、と一息つき、抽選器のレバーを矢印の方向へゆっくりと回した。
ぽこんっ。
赤玉だ。
♪からんからんから〜ん!
「おめでとうございます!2等賞です〜!」
当たり鐘が廊下中に響き渡る。
「2等はですねぇ〜・・・」
黒沢はフリップを取り出し、2等の欄の紙のカバーをみのもんたのように捲った。
「じゃ〜ん!『2等賞、Kaoru Kurosawa Presents 魅惑の変身権獲得』で〜す!」
「はぁ?魅惑の変身?」
「俺と一緒に行きつけのショップに行って、俺のコーディネイトした服をプレゼント!早くもいいの引いたなぁ、酒井〜!」
「はぁ〜?!」
「ぷぷ〜っ!酒井が“黒沢ファッション”ってか!ぎゃはは!」
爆笑が起こる廊下。
「やだやだ!んなもん似合いませんから俺には!」
「っていうか受け取ってもらうよ、当てたんだからさぁ〜。」
「ひぇ〜っ、こんなの賞品じゃなくて罰ゲームじゃないっすかぁ!しおしお・・・」