「これでよし、と。で、次に。ケーキを取り出してみましょう。」
箱は横から開けるようになっており、そこから細心の注意を払いケーキを引っ張り出す。
「おぉ〜!!」
「イチゴ〜!」
「うまそ〜!」
「やっぱりケーキはこれだよな〜!」
姿を現したケーキに、4人から歓声が上がる。
円形のケーキの外周をふちどる生クリームと、それに沿うように真っ赤なイチゴが隙間なく一列に並び円を描いている。
そしてその内側には、お菓子でできたサンタと雪ダルマ、家なども載っている。
「はい、ここでケーキの底のウラを下から覗いてみます。・・・雄二、ちょっと持ち上げて。まっすぐね、まっすぐ。」
「はいよ〜ぅ。」
酒井がアルミの下皿を持ち上げると、北山がその傍にしゃがみ、底を覗き込んで中央を指差す。
「はい、ありました。ココ。ココがケーキの中心。」
「・・・わかんの?」
「はい。ケーキがズレないようにアルミ皿の真ん中にクギみたいに出てる場合があるのです。このアルミ皿はそのタイプのヤツ。」
「もし違ったらどうするつもりだったんだよ?」
「・・・・・・はい、じゃあ雄二、置く寸前まで指当てとくから、さっきの紙の中心に置いて。」
「はいよ〜ぅ。」
精密機械でも運ぶかのように慎重さで、酒井と北山が協力し合い、ケーキの中心と放射線の中心をキッチリと合わせて置いた。
「はい、ケーキの下に置いた放射線に合わせて切ると72度、つまり5等分。大きさもマバラにならないよ。」
おぉ〜っ、と感嘆の声を上げながら拍手をする4人。
北山も満足げな表情を浮かべている。
「というワケで、黒ぽん、あとはよろしく。」
「はいよ〜!まかしといて〜♪」
腕まくりしてケーキナイフを振り上げた瞬間、横にいた安岡が「待って!!」と制止する。
「ん?どうしたの?」
黒沢がケーキナイフを振り上げたまま安岡に話しかける。
安岡はケーキに近づき、中心がずれないようにアルミ皿をゆっくりと回し始めた。
「ない・・・ない・・・ない、ない・・・」
「・・・何やってんだ?」
「よく見ててよコレ!ほら、ココ!5等分にしたら、ココだけイチゴ以外のデコレートがないじゃん!」
安岡の言葉に4人が一斉にケーキに一歩近づき、囲むように覗き込む。
安岡はもう一度ゆっくりとケーキを回転させた。
「ココはサンタ、ココは雪ダルマ、ココは家、ココは『Merry Christmas』って書いたチョコ・・・でもココだけ何もないじゃん・・・。」
安岡がケーキ上の過疎地帯を指し示す。
「ホントだ・・・!」
「ココだけなんか寂しいよね、ポッカリとスペース空いちゃって・・・」