微妙な空気が流れ始めるなか、黒沢が「あ、これマジパンじゃないね。」と言いながらケーキ上部のデコレートを指差した。
「マジパンって?」
「『え?!これがパン?マジで?』『うん、マジマジ。』ってことか?」
「んなワケないだろぉ〜!マジパンっていうのは、アーモンドの粉と砂糖を混ぜた細工菓子。ケーキによくのってるでしょ、硬〜いの。」
「あぁ〜!アレのことかぁ〜!」
「あの、あんまりうまくない、ガスガスのヤツだ!」
「そうそう、それね。よく見たらこのケーキのデコレートは、ほら、これはアメ細工で、これがゼリー・・・あとこれはチョコでできてる。」
シ〜ンと静まり返る控え室。
静寂を破ったのは村上だった。
「俺、マジパン、だっけ?アレならあんまり好きじゃないし、正直『デコレートないとこでもいいや』って思ってたんだけどさ、・・・」
「みなまで言いなさんな・・・恐らく、全員同じこと思ってるだろうからな・・・」
「で、どうすんの・・・?」
「またかぁ〜・・・」
はぁ・・・、と5人が吐いたため息がハモる。
「早く決着つくヤツにしてね、もぅ。前回も勝負してる最中にでんすけ片づけられてて、結局食べれたのライヴ後だったんだから・・・」
安岡がうっとうしそうに他の4人の顔を見渡した。
「はい!いいの思いついたぞ!」
酒井が挙手をした。
「何だよ?」
「ドラフト、ってのはどうだ?」
酒井の提案に4人が「ドラフト〜?!」とハモってオウム返しする。
「そう、ドラフト。自分がほしいデコレートを指名して、誰ともカブらなければそのままゲット。
誰かと指名がカブったら、カブった者同士でクジ引いて、アタリを引いた人がゲット。」
「おおおおおおお〜!!」
「いいね〜!」
力説が功を奏したのか、他のメンバーも納得の様子。
「よし、じゃあ俺言い出しっぺだからパンチョさん役やっていい?!」
そんなこんなで「第1回!チキチキ クリスマスケーキドラフト会議」が控え室で盛大に開催された。
ドラフト候補は、
ゼリー製の家
アメ細工製のサンタ
ホワイトチョコ製の雪ダルマ
チョコ製の「Merry Christmas」プレート
この4選手である。
「さて、紙にほしいものを書こうではないか。」
ケーキを見事な5等分に切り分けられたことで不必要となった包装紙をメモに使える程度の大きさに切り、それに「選択希望選手」を各自
書き込んでいった。
(エコの観点からリサイクル使用)
畳んだ状態で渡されたメモに酒井がひととおり目を通していき、その様子を4人は固唾を呑んで見守る。
皆トナカイのツノを頭につけたままの姿で・・・