「で、どうしたんです?」
いつの間にか自らツノをつけた北山がスタッフに質問した。
「ああ、本来の用事を忘れてましたね。あの〜、実は差し入れがありまして。これ、みなさんで。」
「へぇ〜、差し入れ?何の?」
「ケーキです。」
「けぃくっ!」
「発音!」
「ん?ケーキ?包丁あるよ?出そうか?」
「げっ・・・!だ、出さなくていい!お前は、出さなくていい!!」
黒沢がカバンに向かって歩いていくのを村上が必死に食い止める。
「??・・・そう?」
「はい、ケーキナイフもココに用意してありますんで。」
スタッフの言葉に、黒沢以外のメンバーはホッと胸をなで下ろす。
「では失礼します。」
スタッフは机の上に包装紙に包まれた箱を置き、控え室から去っていった。
それと同時に、メンバー5人、箱にわらわらと集まってくる。
「ケーキでしょ?5人でしょ?・・・もうイヤな予感しかしない・・・」
「だよなぁ・・・」
「でんすけ再来・・・(※たなバトル参照)」
浮かぬ顔をするメンバーを尻目に、北山が颯爽と挙手し、叫んだ。
「こんなこともあろうかとっ!!」
「うるさっ!急に叫びなさんな!」
「ワタクシ北山陽一、なんと分度器を買い、常に携帯しているのでありますっ!」
「おぉ〜!さすが北山!それでこそ北山!」
胸を張ってみせる北山を、黒沢ひとりが拍手で称えている。
「いやいや、待ってよ!ケーキに分度器当てたら分度器にクリームついて、ケーキぐちゃぐちゃになっちゃうでしょっ!」
「甘いっ!!甘いねぇ安岡くん!君の歌声のように甘いぞ安岡くん!」
北山の博士風の口調に、安岡が露骨に表情を歪め「うぜぇ〜!」と小声で悪態をついた。
「まず、紙に大きめに中心角72度の放射線・・・あ、放射線といってもエックス線とかの方じゃないよ?放射状の、線ね。それを書いていきます。」
北山が包装紙を慎重にはずし、カバンからおもむろにペンと分度器、30cm定規を取り出した。
「なんで30cmサシ持ってんだコイツは・・・!」
「そういうプレイに使うためとかかなぁ〜?!」
「プレイって何なんですか?!え?!測るんですか!それとも叩くんですか!どっちなんすか!え?!」
「ちょ、酒井さん落ち着いて!」
メンバーのどよめきをよそに、北山は包装紙の中央辺りに点を打ち、そこから分度器と定規を使い、5本の放射線を長めに引いていく。