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ホテル1階のロビーに到着すると、すでに4人とも集合していた。

「酒井さん遅いよぉ〜!」
「ぶ〜〜〜っ!」
思わず吹き出してしまう俺。

「雄二、どうしたの?何がおかしいの?」

「だって!リーダー、何で上半身裸なんすか!」
「はぁ?ちゃんと着てんじゃん。何言ってんだ?人を裸族みたいに言うな。」
「安岡っ、その皮の兜は・・・」
「兜?ただのバックスキンの帽子じゃん!」
「じゃあ北山の白い賢者の服は・・・」
「どっからどう見てもロングコートだけど?色は合ってるけど。」
「じゃあ黒沢さんのこの“ドロロンえん魔くん”のような格好は・・・」
「どこがどう“ドロロンえん魔くん”なんだよ!あんな牙、生えてないよ!」
「いやいや、あなたが“ドロロンえん魔くん”なんじゃなくて・・・」

周りの宿泊客を見ると、俺たちのことを奇異な目でジロジロ見ている・・・なんてことはなかった。
誰ひとりとしてこちらを気にするものはいない。

4人の戦闘服は俺にしか見えていないのか。
それとも俺以外の人間に、違和感を感じない不思議な魔法でもかかっているのか。

「とっ、とにかくアンタは『女戦士』じゃなくてよかった!」
黒沢さんの肩に手を置きながらそう言うと、黒沢さんは「はぁ?」と言いながら首を傾げた。

「おはようございます。」
マネージャーの伊藤が現れた。
伊藤はどうやらただの『町民』扱いらしく、いつもどおりの風貌だった。

「車、来ました。行きましょう。」

先導するマネージャーについて歩き出した途端に気づいた違和感・・・

なんと・・・俺を先頭に、他の4人がぺたりと張りついたように縦1列になって歩いているのだ。

「ちょっと待て〜ぃ!」

ピタッと立ち止まって叫ぶ俺。
俺が急に立ち止まっちゃったもんだから、後ろの4人が玉突き衝突のように俺の背中にぶつかり、4人分の衝撃を後ろから食らった。

「はぁ?何だよ酒井。さっきからおかしいぞ?」
俺の真後ろにいたリーダーが、背中に張り付いたまま声をかけてくる。

「いやいや!アンタたちがおかしい!縦1列にそんなにくっついて歩いて・・・」
「あの〜、時間もあまりありませんから、急ぎましょう。」
前を歩いていた伊藤が振り返り、俺に言った。

「お、俺が悪いのかよ!」
俺の顔を不思議そうに見る伊藤と4人。

「・・・わかったよ、気にしなきゃいいんだろ?気にしなきゃあ・・・」
そう捨てセリフをして、4人を後ろに引きつれて伊藤の後を追った。


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