「アナタはモンクですよ。」
「俺に何か文句あるのか?」
「いや、文句言う“文句”じゃなくて、モンク。RPGのジョブ(職業)ですよ。アナタは武器なしで闘うモンク。」
「あんまかっこよくねぇな〜、それ。」
「モンクは防具つけれないんですよ。朝から、そしてこの今も、俺の目には上半身裸に見えてるんです。」
「いやん、透視されてる〜☆」
両手を胸の前でクロスし、胸を隠そうとしているリーダー。
「隠さないとダメなもん、ついてないでしょうがっ!」
「じゃ賢者の服着てるってことは、俺は魔法使いっぽいポジション?」
北山が自分のジョブを聞いてくる。
「そう、白魔術師。回復系の魔法を扱ってる。」
「おぉ〜!」と会場から納得の反応が。
「じゃ、俺は?兜、被ってるってことは戦士か何か?!」
安岡がガッツポーズを決めながら、俺に質問する。
「正解!男戦士2、です。」
「2〜?!何その二番手な雰囲気〜・・・」
「パワーより素早さが高いタイプの戦士。」
「ふぅ〜ん、あっそう。」
安岡はちょっと不満げな顔をしている。
似合ってると思うんだがなぁ。
「じゃあ、黒沢は閻魔(えんま)か?」
「そんなジョブありませんよ!この人はあれです、黒魔術師。攻撃系の魔法を使う。」
「え〜!?」「合わない〜!」という声が客席から上がる。
「じゃあ何なら合うんですか?」
客席に向かって問い掛ける俺。
変な沈黙に包まれる場内。
「・・・ないんかい!」
思わず客席に向かってつっこんでしまった。
「俺も戦士がよかったなぁ〜。」
黒沢さんが妙なムードをさらに微妙にするような発言をした。
「けどねぇ、アナタ素早さの数値がやけに低いんで、戦士は無理です。」
客席だけじゃなく、俺と黒沢さんを除くメンバー、バンドのみんなも大爆笑だ。
「何だよそれ!じゃあ酒井は何なんだよ?!」
黒沢さんが俺のジョブを聞いてきた。
「俺は主人公の男戦士1ですよ。」
ヒューヒュー言う客席のファン。
メンバーは皆一様に呆れ顔だ。
「何その別格扱い。」
「俺の視点で起こってる異変なんすから、俺が主役じゃないとおかしいでしょうが。」
「じゃあ今日は主人公の男戦士1に頑張ってもらおうか。なぁみんな〜?!」
リーダーが客席に問い掛けると「いぇ〜い!」と盛り上がる。
「え?」と思ったも束の間、次の曲が始まった。
オイオイ!そんな期待されても、いつもと同じことしかできないぞ、俺は!