「いらっしゃいませ〜。」
カウンターの中に店のオヤジがひとり立っていて、客はいなかった。
「何しましょう?」
「えっとねぇ、じゃあビーフカレー。酒井は?」
「じゃ、俺はカツカレーで。」
「は〜い。」
コップに入った水を俺たちの前に置き、棚から皿を取り出そうとした店主の手がピタッと止まる。
そしてこちらをゆっくりと振り返った。
「失礼ですが・・・ゴスペラーズさんですよね?」
「はひ?」
なんとここでもバトルモード突入・・・しかもこの店主、ボスキャラ扱いのようだ。
「いつも見てますよ!カレーお好きなんですよね?!
いつかウチの店にも来てくれないかなぁなんて思ってたんですよ〜!はっはっはっ!」
店内にはカレーのいい匂いが充満していて、今すぐにでも食いたいのに、店主はカレーを作る手をすっかり休めてしまっていて、俺たちに興奮気味にまくしたてるように話し掛けてくる。
「歌もよく有線でかかりますよ。すっかり覚えちゃってねぇ、スナックのカラオケでもゴスペラーズさんの曲歌うんですよ。
ゴスペラーズさん歌うと、オネエチャンにモテモテなんですよ〜!はっはっはっ!」
こりゃ強敵だ・・・
さっきの中学生には有効打を放てたが、この店主ときたら、俺に攻撃する(突っ込む)隙すら与えない。
店主の容赦ないラッシュに俺たちもかなりの体力を消耗してきている。
早く作ってくれ、店主・・・
「あの〜、カレーね、このお店のカレーのこだわりとかあります?」
スナックのオネエチャンのことを熱く語っていた店主の話の腰をぽっきりと折り、黒沢さんが魔法攻撃をする。
「えっ?あっ、ありますよ〜、こだわり。ウチはスパイスの調合にもルーを薄めるスープにも、ちゃ〜んとこだわってるんですよ〜!」
なおも興奮気味に語る店主。
「へぇ〜、そうなんですかぁ〜。どんな風に作ってるのか、ちょっと厨房を見せていただいてもいいですか?」
黒沢さんによる連続攻撃だ。
「あっ、どうぞどうぞ〜!」
店主がうれしそうに厨房に呼び込んだ。
「失礼しま〜す。」
ふたりで厨房に入り、店主に作り方を見せてもらう。
「へぇ〜、隠し味にそれ入れるんですかぁ〜。」
「ええ。味がまろやかになるんですよ〜。」
「なるほどね〜。」
なんとかふたりでうまく店主を誘導して、カレーを完成に近付けていく。
「あとは、こうやってごはんを盛り付けて、カレーをかけて、はい、完成〜。」
やっとビーフカレーとカツカレーが完成した・・・
『ゆーじぃ たちは しょうりした!
2400Gを てにいれた!』
長い戦いだった・・・
『ゆーじぃ は レベルがあがった!
ゆーじぃ は パワーがあがった!
ゆーじぃ は すばやさがあがった!』
『カオル は レベルがあがった!
カオル は パワーがあがった!』
カオル頑張ったのに素早さは上がらんのだな・・・まぁいいや。