コンコン。
ドアがノックされる。
「は〜い!」
安岡がドアを開けると、レコーディングスタジオのエンジニアが立っていた。
「どう、したんですか?」
安岡が男に尋ねる。
「すいません!その子、俺の子なんです!」
男は5人に向かって深々と頭を下げた。
「え・・・」
「なんで・・・こんなところに放置されてたんですか、この子は・・・」
村上は怒りの表情を浮かべて男に聞いた。
「1年半前に別れた彼女が俺に預けようとしたみたいです・・・。俺、彼女に子供ができてたなんて全く知らなくて・・・。
昨日の夜彼女から電話をもらって初めて知ったんですよ。その子が俺の子供で、スタジオに置いてきた、って。
先週父親が倒れて実家に戻ったそうなんですけど、両親にも秘密にしてたそうで・・・頼る人間がいなかった、って・・・」
「ふざけんな!!」
村上は男の胸倉を掴み、詰め寄った。
それを4人が止めに入る。
「子供はモノじゃねぇんだよ!どういう事情か知らねぇけど、自分の子供放置していいと思ってんのかよ!
なんかあったらお前らどうしてたんだよ!?人の命をなんだと思ってんだよ!母親連れて来い!母親失格だ!
そんな奴にいろはを育てる資格なんてねぇんだよ!」
「・・・す、すいません・・・彼女も反省しています・・・」
男は跪いて、なおも頭を下げた。
「すいません・・・村上熱くなっちゃって・・・。けど、俺たち4人も同じ気持ちです。
こういう形じゃなくて、他に方法があったんじゃないかって思いますよ。」
黒沢が村上の言葉に付け足すように言った。
他の3人もそれに頷いた。
「で、これからどうするんですか、いろはは。」
北山が床に座ったままの男に歩み寄り、立たせてやりながら尋ねた。
「彼女が今東京に向かって帰ってきている最中なので、それまでは俺が。今後のことはふたりで話し合います。」
「こんなに可愛いんだから、これからはちゃんとしてあげてくださいね。」
安岡が言うと、男は「はい」と言ってもう一度頭を下げた。