鍋でレトルトを温めている間、酒井はソファに腰掛けずっとうなだれていた。
黙りこくったままだ。
鍋の気泡の音だけが絶え間なく響く。
下から酒井の顔を覗き込む。
なぁ、酒井・・・
俺がわからないのか・・・?
なんとか自分を証明する方法を見つけないとな・・・
ピー
電子レンジがサトウのごはんができあがったことを知らせた。
立ち上がりキッチンに向かう酒井を追う。
サトウのごはんを大皿と小皿に分けて盛り、その分量に合わせたボンカレー辛口をごはんにかける。
「カレー、無理だったら白ごはんだけ食うんだぞ?」
小皿に盛ったカレーと水を入れた小鉢を俺の目の前に置く。
やっとメシにありつける・・・やっべ、今俺泣きそうかも・・・
“いただきま〜す!”
「にゃぁ〜ん!」
一口食べる。
“あっちぃ!”
「みぎゃぁっ!」
俺は慌てて水を飲む。
「あっ、ば、馬鹿だなお前!猫は猫舌なんだから、ゆっくり食わなきゃいかんだろ〜!」
た、たしかに・・・
カレーはアツアツがうまいのに、それが食べられないなんて・・・
猫って不便だ・・・
酒井が小鉢に氷を浮かべてくれる。
それを舐めて舌を冷やす。
くそ〜、こんなにハラ減ってるのに、もどかしいな!
酒井はスプーンの手を休め、イライラしている俺の背中を宥めるように撫で続ける。
ちょうど俺の舌のヒリヒリが薄れてきた時、酒井は指で俺のカレーをツンツンつついた。
「ん。このぐらいの温度なら大丈夫だな。」
人差し指の先についたカレーをペロリと舐め、「お食べ〜」と言った。
そして酒井は自分のカレーを食べ始める。
俺のカレーが冷めるまでお前も食わずに待っていてくれたのかよ!
お前ほんとイイ奴だな!
感心してる場合じゃないな、俺も食べよう。
もちろんカレーのかかってる部分を食べた。
うまい・・・
ボンカレー辛口がこんなにうまいと思ったことはない。
俺はガツガツ犬喰い状態で食べた。
いや、猫なんだけどさ。
小皿のカレーライスを一気に平らげ、満腹になった。
口のまわりにカレーがいっぱい付いてしまい、それを自分でペロペロ舐める。
なんだか本当に猫っぽい。
あ〜、うまかった!
“ごちそうさま〜!”
「にゃぁ〜ごぉ!」