バッグの中に入れられて、ママさんの病室に向かっていく。
ゴスペラーズが5人で歩いているからか、周りのざわめきが聞こえてくる。
「ここだな、ママさんの病室。・・・くろ、お前がドアを開けろ。」
「うんっ」
くろは、ぎこちない手つきで引き戸を開けた。
「ままさんこんにちわぁ〜。」
「く、黒沢さん・・・?!」
ママさんの驚く声が聞こえ、4人も続いて病室に入り、お辞儀をする。
「失礼します。」「初めまして。」
「あ、あ、あの・・・これは・・・?」
病室に5人揃ったゴスペラーズ。
ママさんが驚くのは無理はない。
酒井は持っていたバッグから俺を抱き上げた。
「くろも・・・?!」
「あの、驚かないで聞いていただけますか?
実は〜・・・ワケあってくろ君と黒沢さんのカラダが入れ替わってまして・・・」
「入れ替わる・・・?」
「そうです、あの〜、今黒沢さんの格好してるのがくろ、今くろ君の格好をしてるのが黒沢さん、です。
・・・わかります、かね・・・?」
「そんな・・・信じられない・・・」
ママさんはまだ半信半疑といった様子だ。
酒井がくろに話しかける。
「くろ君。ママさんに言いたいことあるんだろ?早く言いなさい。」
くろは「あ、そうだった。」と言って、ママさんにベッドの傍まで歩み寄った。
「ままさん。はこのなかでおなかぺこぺこだったときに、はこからだしてくれて、みるくくれてありがとぉ。
いつもごはんくれてありがとぉ。けどもうひとりでごはんとれるからだいじょうぶだよ。
だからびょうきしっかりなおしてね。・・・おわりです。」
くろが一気に言い終わると、ママさんが強張らせていた表情をやっと和らげた。
「私がくろを箱の中から見つけたって知ってるのは私だけ・・・私とくろだけなんです。
あなた、ホントにくろなのね?」
「うんっ」
やっと信じてもらえて、俺たちはホッと胸を撫で下ろした。