18.das Versprechen(ダス・フェアシュプレッヒェン)
朝起きて、着替えや何やら済ませてホテルを後にする。
コンビニで買ったパンなどを車中で食べ、早速病院へと向かった。
病院の駐車場に車を停めたところで、村上がくろに声をかける。
「なぁ、くろ。」
「ん?なぁに?」
「そろそろ・・・猫に戻ってくれないか?こいつは・・・俺たちの仲間だ。早く元の姿に戻してやってほしい。」
“待って。”
「にゃぁ」
俺はくろの前に立ちはだかった。
「どうしたんです?黒ポン・・・」
酒井から尋ねられる。
“戻るのは・・・くろがママさんと会った後にしたいんだ。”
「にゃ、みゃぁにゃんにゃぉぅん」
こんな言葉で伝えても、伝わらないのは百の承知。
でも、それでも何とか伝えようと、首を横に振ったり両手で×を作ったりしながら、身振り手振りで必死に説明する。
「あ〜もぅ、何が言いたいんだよ!?」
イライラする村上を、酒井が制した。
「そう・・・それですよ・・・」
「え?雄二、それどういうこと?」
「今、俺たちが黒ポンの言葉がわからないみたいに、ママさんと猫のくろ君が対面しても、くろ君の言いたいことはママさんに伝わらない。
だから、今のままでいい、って言ってるんですね・・・?」
俺は、酒井が解読した言葉に大きく頷いた。
「マジ、かよ・・・」
“行こう。早くママさんのところへ行こう。”
「にゃ、にゃぉぅんにゃんにゃ」
俺は車のドアを指差した。