←BACK


2.Hilfe!(ヒルフェ)

 

俺はどうしたらいいのだろう。

この先、猫として生きていかなきゃいけないのか?

それにしてもハラ減ったなぁ・・・
ネズミとか残飯とか食うのヤだなぁ・・・

絶望に肩を落とす。

その時、モーター音に混じって都会の雑踏が微かに聞こえていることに気づいた。

そうか。
俺、今 動物になってるから、耳がよくなってるのか。

耳を澄まして雑踏の聞こえる方へ足を進めていった。
日が傾いてきたのか、さっき目醒めた時より確実に暗くなってきている。

早くここから出たい。
その一心で神経を研ぎ澄ませる。

徐々に近くなる街のノイズ。

街に出れる!
俺は音の方へと走り出した。

角を曲がるたび路地の道幅がだんだん広くなってきて、ついには人通りの多い大通りが目前に現れた。

俺は知らぬ間に何年ぶりかの全力疾走をし、大通りに向かって飛び出した。

 

“やったぞ〜〜!!”
「みゃぉぉ〜〜ん!」

俺は喜びのあまり大声で叫んだ。

横を通った若い女の子が俺の存在に気づき、こっちに近づいてくる。

やばい・・・俺、気づかれた??
握手とかサインとか求められて、周りの人も俺に気づいて、大勢の人に囲まれちゃったりしたらどうしよう・・・。

咄嗟にじりっと後退りする。

女の子は俺の前にしゃがみ込むと、頭を撫でてきた。

「よしよし〜、かわいいね〜」

そっか。
俺今猫になってるんだっけ。
すっかり忘れてた。

それにしても・・・すごく心地いいんですけど。
若い女の子に頭撫でてもらえるなんて、猫になるのも悪くないな。

「じゃあね、バイバイ」
俺の頭をぽふぽふと軽く2回たたくと、女の子は笑顔で去っていった。

“うん、またね〜”
「にゃにゃぁ」

俺の声に反応して女の子は振り返り、ニッコリ笑って小さく手を振った。

俺も手を振ろうと思ったが、振れなかった。

仕方がないのでしっぽを振ってみた。
うまく振れているか、自分ではよくわからなかったけれど。


→NEXT

→目次

→シネマTOP