俺は路地で目を醒ました。
まばたきをゆっくりと繰り返すと、ぼやけた視界が少しずつクリアーに見えるようになった。
遥か遠くに見える青空。
・・・あぁ、思い出した。
カレー屋を求めて路地へ。
店見つからず。
道に迷う。
こける。
で、気を失ったのか。
カラダを起こそうと動かしたら、カラダ中のあちこちが痛く、頭がガンガンする。
くっそ・・・
気力で立ち上がる。
周りを見渡す。
さっきの路地だ。
しかし、倒れる前の景色とどこか違う。
何かが違う。
まるでさっきの路地が巨大化したようだ。
なにもかも大きくが見えるのは、気のせいか。
気のせいだな、きっと。
重いカラダに鞭打ちながら、宛もなく歩き始める俺。
段差や瓦礫をよけながら歩を進める。
目の前に水溜まりが現れた。
濡れないように気をつけながら跨ぐ。
水面に映る猫の顔。
なんだ、猫か。
・・・・・・
猫?
振り返り、通り過ぎた水溜まりをもう一度覗き込む。
猫。
黒い子猫の顔。
俺は左手でそっと水面に触れる。
猫の顔に波紋が広がる。
???
水面の猫の顔から自分の左手に視線を移す。
黒い猫の手。
・・・・・・
まさか、な・・・
そうだ。
さっき頭打ったから自分が猫に見えるのかも。
それにしても自分が猫に見えるって・・・俺って変。
なんだか急に可笑しくなってきて、俺は笑った。
“ははは・・・”
「にゃぉ〜ん」
・・・・・・
“あれ?”
「みゃ?」
声が出ない。
いや、出ている・・・猫の鳴き声が・・・
え?
ええっ!?
俺は恐る恐る自分のカラダを見た。
猫。
どっからどう見ても・・・猫ですけど・・・?
“はは・・・嘘だろ?”
「にゃ・・・にゃぁ」
もう一度水溜まりに身を乗り出す。
黒い子猫が映る。
声を出す。
“あ〜”
「みゃ〜ん」
!!!
俺・・・猫になってる!?
“嘘だろ〜〜〜!!?”
「にゃぉぉぉ〜〜ん!」
路地裏いっぱいに猫の鳴き声が響き渡った。