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交番や警察署の前なんかを極力避けるように自転車を走らせ、やっと事務所へと戻ってくることができた。

くろ君を連れ、3人が待つ部屋へ向かう。

「・・・ただいま、戻りました・・・」
「酒井・・・」
「すいませんっ・・・俺っ・・・」
「もういい・・・俺も言い過ぎた・・・すまなかったな・・・。で、くろはどうした?」
「あ、後ろにいます・・・くろ君、入って。」

振り返って呼ぶと、くろ君は俺の背後から顔だけ覗かせた。

「こんにちわ〜。さかなのそーせーじおいしいねぇ。」

くろ君の謎のコメントに、場の空気が不思議なものになる。

「これ・・・黒沢がついに“行くとこまで行った”ワケじゃないんだよな・・・?」
「あんた、なんてことをっ!中身は正真正銘、猫です。こう見えても『いろは』は歌えないですから。」
「信じられないねぇ。」
「見た目は黒ポンなのに。」

村上だけではなく、安岡も北山も半信半疑といった様子だ。

「ま、ひとまず座るか。・・・くろも、ほら、座れ。」
「うんっ」

くろ君は俺の横の席に座り、すぐ魚肉ソーセージをうれしそうに頬張った。
その様子にしばし皆、釘づけになる。

村上はふと我に返ったのか、コホンと小さく咳払いをして仕切り直した。
一瞬にして緊張が高まる。

「で、だ。どうする。まずは黒沢を見つけないと話になんねぇ。」
「まずどうやって見つけるか、だよね。う〜む・・・」

安岡が両腕を前で組んで、天を仰ぐ。
上を向いても天井に答えは書いていないのだが。

リーダーが、持っていたペンの先を机に打ちつけて、コツコツコツコツ、と音を立てる。
相当苛立っているのか、その規則正しいリズムは鳴りやむ様子がない。

ペシっ。

突如、くろ君が村上のペンの先を叩いた。

「コラ、てめ何すんだよ、くろっ!」
「・・・びぇぇ〜っ!!おにいさんにおこられたぁ〜!びぇっ、びぇ〜〜ん!」
「・・・リーダー・・・ペンにジャレちゃったみたいです・・・」
「・・・くそっ・・・」

リーダーはペンを机に放り投げ、お手上げのポーズをとった。

「よしよし、恐くない恐くない!このお兄さん、見た目ほど恐くないんだから!ホントはやさしいお兄さんなんだよ〜?」
「泣かないで。ほら、魚肉ソーセージまだ余ってるでしょ。はい、アーン・・・。」

くろ君をなんとか宥めようとする安岡と北山。
さらにイライラを募らせるリーダー。
俺がこんなヘマさえしなければ、とまた後悔が堂々巡りする俺。

ひとりいないだけでチームワークは最悪、である。


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