またまた腹に腕が食い込むほど強く抱かれたまま、とうとう ももちゃんの住むマンションまで来てしまった。
「はい、どうぞ〜。はいってくださぁ〜い。」
ひとしきり泣いてすっかりご機嫌になったももちゃんに言われ、俺はその言葉に甘えて家に上がった。
“お邪魔しま〜す。”
「にゃんにゃ」
ももちゃんの後ろをついてリビングに向かう。
「くろにゃん、ちょっとまってね、ごはんあげますからね〜。」
なんともままごとタッチな口調だが、ももちゃんは慣れた様子で皿を用意して、冷蔵庫にあった料理を皿に盛っている。
“エサ”じゃなくて、普通に人間の食べる“メシ”だ。
よかった、ももちゃんに猫を飼った経験がなくて。
これがなまじ猫の知識があったら、こんなごはん用意しないもんな。
「はい、どうぞ!」
目の前にちゃんとした人間の食事。それに水。
うれしさのあまり、ちょっと泣いてしまいそうだ・・・
“い、いただきまっす!”
「にゃ〜ごぅ」
うまい・・・うまいよ・・・
ポテトサラダうまいよ!焼鮭うまいよ!炊き込みごはん冷たくても超うまいよ〜!
ガツガツ食べて、あっという間に満腹になった。
“ごちそうさまでした。ももちゃん、ホントありがとう!助かったよ〜”
「にゃあ、にゃっにゃんにゃぁにゃ〜ん」
その後は、ももちゃんと一緒に夕方のアニメ見たり、一緒に絵本読んだり、童心に返って時間を過ごした。
夜7時過ぎ、玄関のドアの鍵が開いた音がした。
「あ、ままかえってきた!」
ももちゃんは玄関までダッシュで走っていった。
「ただいま。」
「おかえりなさ〜い!ももねぇ、きょうからねぇ、くろいにゃんにゃんかうんだよ!」
「え?!」
ママが慌てた様子でリビングに向かってくる。
「ももちゃん、猫さん連れて来ちゃったの?!」
「うん!かわいいでしょ〜?」
「もう・・・パパきっとダメって言うわよ?」
「やだ!かうもん!」
ももちゃんは俺を抱えて部屋の隅に走って逃げてしまった。
「困った子ねぇ・・・パパが帰ったら、聞いてみましょう・・・」