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ももちゃんは俺を抱いたまま、どこかの公園にグングン入っていく。

「♪まいごのまいごのこねこしゃん〜。」

迷子というか、誘拐です。拉致です。マジやばいです。

けど腕が腹に食い込むほど強く抱えられてるから逃げれないんだよな。
この際、腕の中で暴れてもいいかな、なんて思うけど、何の罪もないこの子の腕を引っ掻くのもイヤだしなぁ・・・。

「もも、にゃんにゃんかうの、はじめてだよぉ〜。ぱぱとままもよろこぶかなぁ。ぱぱとまま、よるになったらおしごとからかえってくるんだ〜。」

パパとママは夜帰ってくる・・・ももちゃん、カギっ子なんだ。
俺にもそんな時代あったけど、こんなに小さいのにカギっ子とは大変だな。

「おい、もも!」

いきなり女の子の目の前に、小学校低学年ぐらいのクソガキ・・・もとい、男の子が数人駆け寄ってきた。

「そのネコ、よこせよ!」
「だめ〜!くろにゃんはもものだもん!」

いやいや、そうじゃなくて俺は酒井の・・・って違〜う!!
俺は誰のものでもない、人間だ!
人間を取り合うな!ゴスペラーズのメンバーを子供が取り合うんじゃないよ!

「おまえ年下のくせにナマイキだぞ!」「ほら、かせよ〜!」

クソガキの方が生意気だってば!

「やだぁ!やめてよぉ!」
「なんだよこいつ!」

パチン!

ああっ!クソガキ!よくも俺のももちゃんを殴ったな!
(将来、店を持たせるかもしれないから、一応『俺の』と言ってみた。)

“お前らホントいい加減にしろよ〜!!”
「ふぎゃぁっ!ぎゃおぅぎゃおうぅっ!」

殴られて緩んだももちゃんの腕の中から抜け出し、ガキどもを順番に引っ掻いてやった。

「いてててて!」「うわぁ〜!」「たすけてぇ!」「なんだこのネコ!」

どんなもんだっ!ほらお前ら帰れ帰れ!

「びぇ〜ん、血ぃ出たぁ〜!」「にげるぞ!」「もものバ〜カ!」

ガキどもは捨てゼリフを吐いて、ベソ掻きながら走って逃げていった。
さすが俺。猫になっても格闘センスあるなぁ。

そうだ、ももちゃんの腕から逃げ出せたから、この隙にさっきのコンビニまで戻れるんじゃ・・・

「・・・ふぇ〜ん・・・いたいぃ〜・・・こわかったよぉ〜・・・ふぇ〜・・・っ・・・」

“も、ももちゃん?!”
「にゃ、にゃぁ」

叩かれた頬っぺたを押さえ、号泣するももちゃんを置き去りにすることはできなかった。

“よしよし、もう恐くないぞ〜?”
「にゃん、みにゃぁんにゃん」

爪を立てないように、赤くなったももちゃんの頬を撫でてやった。

妹とふたり、両親の帰りを心待ちにしていた・・・そんな子供の頃の自分と、ももちゃんを重ね合わせてしまう。

俺のことはあいつらがきっと見つけ出してくれるだろう。
だからそれまでは、彼女のそばにいてあげるのもいいかもしれないな、なんて思った。


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