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11.Fang(ファング)

 

「うぉ〜!自転車どこぢゃ〜!Right or left?!」

ダンジョン出口付近で酒井と一緒にキョロキョロして見渡してみたものの、自転車止めた辺りの風景は見当たらない。

“とりあえずこっちでいいんじゃない?”
「にゃぁ〜ぉぅにゃぁ」

勘で右方向を指差してみる。

「ライト方向っすね」
酒井は右方向に向かって進み始めた。

しかし進めども進めども自転車駐輪地点は現れない。
結局自転車は3回大きな角を曲がって、そこからかなり歩いたところで発見された・・・。

「これってもしや・・・逆から行ったら角1回曲がってすぐのとこだったんでは・・・」

“あは・・・そうかも・・・”
「にゃ・・・にゃぁ」

「ぐぁ〜っ!めちゃめちゃ遠回りしてんじゃん!アンタの動物的勘を信じた俺がバカだった!」
酒井はぐゎしぐゎしと頭を掻いた。

そう言われてもさぁ〜・・・

 

「・・・じゃ、行きますかね。いざ、くろ君!いざ、病院!いざ、ママさん!」

俺を前籠に載せて、酒井はペダルを漕ぎ始めた。
酒井は中野浩一ばりの脚力を発揮し、ぐんぐん前進していく。

そんなに猛スピードで疾走されると、前から強風が吹きつけてきてマジ息苦しいんだけど・・・
これじゃ鼻歌歌えないじゃん・・・

目を閉じて必死に踏張っていると、キキィッと激しいブレーキ音を立て、自転車が止まった。
慣性の法則ってやつだろうか、酒井が急に止めたもんだから、反動で籠の内側に激突してしまった。

“いっったぁぁぁ〜っ!”
「みぎゃぉぅん!」

「こ、ここか・・・?」

白い建物の壁には、さっきバーの男に教えてもらった病院の名前が掲げられていた。


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