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「へぇ〜・・・こんなところに店が・・・」

驚くのも無理ないよな。
ホント、何もない路地の真ん中にカレー屋やスナックやバーが固まって数件あるんだから。

「ここがカレー屋か。」

ママさんが病気だからだろうか、カレンダーの裏に「勝手乍ら、しばらく休業します。店主」と書かれたものがドアに貼られていた。

ドアノブを捻るが鍵がかかっており、ノックしたが返事もない。
店内は無人のようだ。

「あれ?お兄さん、カレー屋に用事?」

ビールの空瓶が入れられたケースを両手で持った中年の男が、俺達に声を掛けてきた。
どうやら隣のバーの人のようだ。

「えぇ。ママさんのお見舞いに行きたいんですが、どこの病院かわからなくて。」
「あ、くろ。飼い主見つかったのか。よかったな。・・・ちょっと待ってな。」

男は地面にケースを置くと、俺の頭をワシャワシャと撫で、店内へ消えて行った。
痛い・・・ちょっと手加減してくれ・・・。

「よかった〜、くろ君抱いてる・・・じゃなかった黒ポン抱いてるから怪しまれなかった〜」

お、お前、そこ間違えんなよ〜!

「ここ。」
男が店から再び出てきて、病院名と町名と簡単な地図が書かれたメモを酒井に手渡した。

「あっ!ありがとうございます!」
酒井はペコペコと頭を下げて礼を言った。

「あのぅ・・・すいません、ここからどうやって脱出すればいいんですか?」
「『テレポ』唱えたらここの入口に戻るよ。」
「まままま、マジっすか!」
「ははっ、嘘に決まってるだろ〜。出る時は、あのスナックの方へ向かって左に5回曲がったら出るよ。」
「5回!?ぐるっと回ってしまいませんか?それ・・・」
「いやいや、ビルの大きさはそれぞれ違うから450度回ったことにはならないんだよ。」
「なるほどぉ。」
「出口のところにタバコ屋があるからさ、今度来る時はそこから入ってきて右に5回曲がると、すんなりココに来れるよ。」
「ありがとうございます、今度そちらのお店にも伺います。」
「お、よろしくね。」

バーの男の教えてくれたとおりに進むとタバコ屋の脇へ出てきた。

「お〜!出れたよ!」

“お〜!これでカレー屋にも来れるなぁ!”
「にゃ、にゃぁにゃにゃんにゃあん」

「じゃあ病院に行きますか!」

酒井は俺を抱えたまま病院へ向かい10歩ほど進んだところで立ち止まった。

「し、しまった・・・自転車・・・どこ止めたっけ・・・」

さっきのスタート地点探さないといけないじゃん!

「もう路地には入りませんよ!外の道から自転車のとこまで戻りますから!」

うぉ〜っ!またまたタイムロスじゃんかよ〜!


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