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7.das Bad(ダス・バート)

 

酒井の後を追ってリビングに戻ると、酒井がこう言った。

「そろそろ風呂入ろうかと思うんだけど、黒ポンどうする?」

“俺も風呂入りたい!”
「にゃにゃぁにゃ」

挙手でアピールする。

「じゃあ行きますかね〜。」

テキパキと風呂の準備をする酒井の後ろをついて歩く。

「はい、準備できましたよ〜。じゃあ先に入ってちょっと待っててください。」
酒井は俺をひょいと抱え上げバスルームの床にそっと置くと、バスルームから出てドアを閉めた。

曇りガラスの向こうで酒井が服を脱いでるのが見える。

これまでメンバーと一緒に温泉入ったこともあるし、ライブ中の着替えで恥ずかしいと思ったことはないし、メンバーの着替え見ても別になんにも思わないし、売れない頃地方でホテル泊まる時ふたり1部屋とかになっても照れなんてもんは全くなかったが・・・さすがに家風呂にふたりでというのは初めてなわけで。照れくさいし、ほんとはひとりで入りたいんだけどなぁ。かと言ってひとりでは入れないし。酒井に『黒沢ってば猫になったのをいいことに、一緒に風呂に入って俺の裸を見ようとしてるんじゃあ!?』なんて思われたらどうしよう!違う違う!そうじゃ、そうじゃない!今日は泥だらけだし風呂に入りたいだけだぞ、誤解するなよ酒井!

 

さまざまな思いが一気に頭の中でぐるぐる駆け巡っている最中、外から酒井が声を掛けてきた。

「んじゃ入りますよ〜。」
腰にバスタオルを巻いて入ってきた酒井の姿を見た途端、なんだかすごく恥ずかしくなってしまい、風呂場の片隅に頭を押し付けて身体を丸めた。

「あ・・・何やってんすか、またぁ。」

はぁ、とまた大きな溜息ひとつ。

「アナタねぇ・・・。ズバリ言わせてもらっていいっすか?」

表情は見てないが、酒井がイライラしているのが背中の方からビシビシ伝わってくる。

「・・・ワシゃ猫のトイレとか風呂とか見て興奮したりしないし、男に裸見せて喜ぶような変態じゃないっつぅのっ!!」

バスルームの中で酒井の怒声がエコーのように反響する。
すっごい剣幕で怒られてしまった・・・。

猫になってからロクなことがないな、ほんとに・・・。
あまりのショックで、思わずうなだれる。

「・・・と、とにかく、あまり意識しすぎんでください。そんな過剰に意識されると、逆にこっちが意識してしまいますよ。ったく。」

ご、ごもっとも・・・。
っていうか、酒井ってすごいなぁ、俺何も言ってないのに俺の考えてることわかるなんて。


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