「ごめんごめん、ナマのゴスペラーズ見れてうれしかったもんだからね、つい・・・。」
「い、いえ、こちらこそ!僕たちも今日同じイベントでユニコーンさんと出演できて、ホントうれしいです!」
川西の言葉に、安岡が満面の笑みを浮かべて答える。
「・・・それはそうと、みなさんはこちらで何を・・・?」
北山がユニコーンの5人やテント周辺に視線を巡らせながら問いかける。
「ああ、これ?なんかね、いろいろ遊ぶ道具、用意してくれてるみたいなんだよ。」
手島が親指を立て、後ろを指差した。
5人は左右に分かれ、背後に置かれたテーブルをふたりに見せた。
その上には、スポーツ用具一式がたくさん置かれている。
5人は、その中から野球のグローブを手に取った。
「俺たちは、ホラ。」
「今から円陣組んでキャッチボールすんの。」
奥田と阿部がグローブをはめた手のひらに自らの拳をトントンと叩いてみせた。
「君たちも、入る?」
EBIが、手にしたボールを握り締めたまま投げるフリをする。
「ええっ?!」
「いいんですかぁ〜?!」
と、ふたりが喜んだのも束の間、残念ながらテーブルの上にはグローブはもうなかった。
「なんだよ〜、野球だったら最低9はいるだろ、9は。」
「いや、こんなとこでそんな本格的な野球するなんて誰も思ってねぇだろ。」
ブ〜ブ〜と文句をたれる奥田に、手島が冷静に突っ込んでいる。
「あっ、あの、僕たちは別のをやりますんで、野球はみなさんで!ど、どうぞ!」
不穏な空気になりつつ場を丸めようと、北山がフォローに回った。
「はいっ、他にもいろいろ置いてあるみたいなんで!!お、お気になさらず・・・!」
安岡も何とか笑顔を作って必死に説得する。
「そう?・・・んじゃあ、野球は俺たちだけでやるとするかね。」
川西の号令に、ユニコーンのメンバーはゾロゾロとテントを後にする。
「ホントは『壁当て』やりたいんだけどなぁ。」
「壁ないっちゅうの・・・」
EBIの呟きに阿部がぞんざいな返事をして去っていくのを見て、北山と安岡は目を合わせて笑った。