ステージ裏側にある出演者とスタッフのみが立ち入れるエリアに、5人を乗せたワゴンがゆっくりと停車した。
「みなさんお疲れさまでした〜。会場到着です。」
マネージャーがシートベルトをはずしながら、後ろに陣取る5人に声をかけた。
ひとしきりの大合唱を終えてしばらく。
携帯電話をいじっていた者は顔を上げ、眠っていた者は体の感覚を目覚めさせようと伸びをしたり目をこすったりしている。
「リハの時間はもう決まってるのかな?」
北山がマネージャーに問いかけると、「いえ、まだ決まってません。今からスタッフさんに確認してきます。」と答え、降車し足早に去っていった。
メンバーも各自荷物を持ち、ワゴンから順に降りていく。
「あ〜、よく寝た!」
「うわぁ〜、すっげぇ景色いい〜!」
「風が気持ちいい〜。」
「客席もだけどバックステージのエリアも広くとってあるなぁ〜。」
「お、もうリハ始まってるじゃん。誰?」
5人が口々に感想を言っているなか、マネージャーが小走りで帰ってきた。
「うちのリハはまだみたいでした。だいたいあと2時間後ぐらいで順番回ってくる予定です。
あそこに控え室用の白いテントがあるので、自由に使ってくださいとのことです。
近くに食事や軽食を提供してくれるテントもあるみたいなんで、好きな時に行って食べてください、ということで。」
マネージャーが指差す方に、白いテントが20〜30個ほど固めて建てられている。
スタッフが忙しそうに出入りしており、そこが出演者の控え室だけでなく、機材置き場やスタッフの休憩場所なども兼ねていることが窺われる。
「じゃあ今は自由時間ってこと〜?」
マネージャーの言葉を受け、黒沢が聞き返した。
「はい、そうなりますね。リハ開始までは自由にしていただいて構いません。
2時間後にはテントに戻って来てください。それと、予定が早まる場合もありますんで、あまり遠くには行かないようにお願いします。」
「おけ〜。じゃあ一旦解散!」
リーダー村上による号令で、メンバーは各自いろんな方向へと歩き出す。
何をするでもなく歩き始めた北山の後ろを安岡が追い、「どこへ行くの?」と問いかけた。
「う〜ん。特に何も考えてないけど。」
「俺も〜。」
「3人はどこへ?」
「テツは他の出演者のリハ見に行くって言ってたよ。あと、黒沢さんと酒井さんはテントに向かって一直線だよ。『カレーの匂いする!』って。」
「あはは!ありがち〜。」
「でしょ〜?・・・俺もね〜、今のうちに食事済ませようかと思ったんだけど、朝ごはん遅かったのにサービスエリアで買い食いしちゃって・・・」
「俺も。朝抜きで来ちゃって、さっきの休憩でうどん食べちゃったよ。」
「マジか〜。」
「マジよ〜。」
「・・・」
「・・・」
「で、どこ行くの?」
とふたりでキョロキョロと辺りを見回しながら、行く宛てもなく歩いていく。