「おおっ、いたぞ!!」
誰かが遠くで叫ぶ声が耳に届き、安岡は目を覚ました。
「んん・・・?また寝ちゃってた・・・?」
辺りはすでにすっかり暗くなり、夜になっている。
ここはどうやら日中北山と足を踏み入れた森のようだ。
今いる場所は木がまとめて伐採され、周囲数メートルは木が生えていない。
そのため、夜空に昇った大きな満月の明かりで状況が把握できる。
そこの太い木の切り株に腰かけた状態で目覚めた安岡は、1メートルほど先で同様に座り込んでいる阿部が大アクビで目をこすっている姿を捉えた。
「夢でも見てたかな・・・」
そう呟いた時、木々の枝をかき分けて近づいてきていた複数の足音が背後で止まった。
「おいっ、ふたりともこんなところで何しょうるん?!」
安岡と阿部が振り返るとユニコーンの手島がいて、その後ろから川西とEBIも顔を出した。
「あっ、お疲れさまです〜。」
阿部が3人に向かってペコリと頭を下げる。
「『お疲れさま』じゃないじゃろ。はよ戻ろや。」
心配そうな表情で呼びかけてくる手島に、安岡と阿部は「あっ、はいっ!」と答えて3人の元へと向かう。
「それはそうと、阿部さんいてよかったですねぇ〜。民生さんは見つかりました?」
安岡がそう尋ねた途端、周りにいたユニコーンの4人がキョトンとした顔をして安岡の方を見つめてきた。
一瞬の沈黙の後、安岡の隣にいた阿部が、「あはははは!何言ってるんですか民生さんっ!」と言って爆笑し始めた。
安岡も笑いを堪えきれずに、すかさず返す。
「ぎゃはは!阿部さんこそ何言ってるんですかっ!ツッコミの試験か何かですか?!
ベーシックなツッコミでいいですか、『僕、民生さんじゃないですよ!』ってカンジで!」
「あはははは!民生さん、高度なギャグをくり出してきますね!ツッコミでボケるし、僕阿部さんじゃないですし・・・」
安岡と阿部が謎の会話を繰り広げるなか、「ちょちょちょ、待ち・・・」と川西が割って入った。
「はい?」
「どうしました?」
安岡と阿部が会話を止め、川西の方を見る。
川西はゴクリとツバを飲み込み、ゆっくりと口を開いた。
「君たち・・・誰・・・?」
「誰って・・・安岡ですけど。」
安岡が答えると、阿部が目を見開き、「え、安岡?!」と叫ぶ。
「え?どうしたんですか?」
「ホントに安岡なの?!」
「そうですけど・・・?」
そう答えた声は、たしかに自分のものではない―――安岡はようやく気づいた。
それに、自身に対する阿部の様子もどこかがおかしい。
「ちょちょちょ・・・」
再び声を上げた川西は、阿部を指差して「・・・で、君は・・・誰?」と問いかけた。
「北山ですけど?・・・あ、声・・・。」
これを聞いた安岡は、「えっ、阿部さんじゃなくて、北山さん?!」と驚愕の声を上げる。
「ということは、つまり・・・こっちの民生のカッコしてるのが安岡くんで・・・こっちの阿部のカッコしてるのが・・・北山くん?ってことになるの?」
現状の異変を端的にまとめた川西の言葉に、手島・EBI、そして北山(姿は阿部)・安岡(姿は奥田)が一斉に「えええぇぇぇ〜?!」と絶叫した。