一方、時を同じくして、同じ森の中、別の地点では―――
「お前らリハすっぽかして、こんなトコで何やってんだ?!周りにどんだけ迷惑かけりゃ気が済むんだよ?!」
「ホントだよ〜・・・。ほら、いつも言ってたろ〜?絶対、遅刻はダメだよ〜、って。」
「まぁ、谷村新司さんの仕事、遅刻ですっぽかしてクビになった2人が言っても説得力がないけども・・・」
村上・黒沢・酒井の3者3様の言葉に、北山が「遅刻して悪かったね。ごめんよ、村上くん。」とヘラリと笑った。
「はぁ?!『村上くん』だぁ?!フザけてんのか北山ぁっ!!」
烈火のごとく怒り出した村上に、今度は安岡が「む、村上くん、こ、恐い・・・」と呟く。
「テメェもか、安岡っ!!お前らいい加減ナメってっと・・・」
「・・・ちょい、リーダー、・・・あのっ・・・」
安岡に掴みかからん勢いで一歩踏み出した村上を、酒井が羽交い絞めで阻止した。
「黙ってろ酒井、こんな時に話の腰折ってくんじゃ・・・」
「いや、違うんすよ、そうじゃなくて・・・」
「何だよ酒井っ、お前まで・・・!」
「いや、あの、・・・おかしいっす!!」
「は?・・・何が。」
「だからあのっ、北山と、安岡の、様子が、ですよ!」
酒井が北山と安岡を順に指差しながら説明する。
村上は、その指摘にようやく我に返り、北山と安岡に視線を向けた。
恐ろしさにビクビクと身を寄せ合う北山と安岡。
たしかに違和感がある。
しかも酒井が言った「北山と安岡」という部分に引っかかった当の2人が、「え?北山?どゆこと?」「安岡って?え??」と顔を見合わせて首を傾げ始めた。
「あの〜・・・すいませんっ、お名前、聞かせてくれませんかね・・・?」
表情を強張らせた酒井が2人に問いかける。
先に答えたのは、安岡だ。
「え、誰って・・・今になって名前聞かれるとは。結構有名だと思ってたんだけど・・・ん?声が違う・・・??」
「あ、あの、・・・お名前を・・・」
「奥田民生だけど・・・?」
「えええええええ〜っ?!」
驚きのあまり、村上・黒沢・酒井は絶叫しながらその場に尻もちをついた。
無理もない、安岡そのものの姿で、中身が奥田とは。
奥田(姿は安岡)の隣で、北山も「えっ、民生?!マジで?!」とすっとんきょうな声を上げている。
「ということは、もしかして・・・こっちも、北山じゃなくて・・・」
黒沢が、目の前の北山を凝視して呟いた。
「あ〜、え〜っと・・・阿部義晴って言います・・・」
「えええええええええええええええ〜〜〜っ?!」
黒沢が199dBの大ヴォリュームで再度叫んだ。
「ヤベぇ・・・俺、腰抜けたわ・・・立てねぇ・・・」
「だ、大丈夫っすか、アンタ・・・」
「だ、だって俺、民生さんと阿部さんにあんなクチ・・・・・・すっ、すいませぇ〜ん!ホントすいませぇ〜ん!悪気はなかったんですよぉ〜!!」
たしかに完全に腰が抜けていた村上であったが、さっきの無礼に気づいた途端に土下座の姿勢をとり、額を地面につける勢いで詫び始めた。
「いや、いいよ。気にしないでいいから。」
「怒ってないよ。」
姿は北山と安岡である奥田と阿部が、気にする様子なく笑顔で返す。
「いや、でも、谷村新司さんの仕事すっぽかした、ってやつ?その事実はマジ恐すぎたわ。」
奥田(姿は安岡)がつけ加えた言葉に、村上と黒沢は引きつった笑みを浮かべて深々と頭を下げたのであった。
つづく!!
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