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そして今日も特訓だ。

今日は、フォームの矯正とまっすぐ泳ぐ練習。

普段ロクに運動なんてしたことなかったのに、急に猛練習を始めたもんだから、カラダのあちこちが悲鳴を上げている。

脚と腕が鉛になったように重く、思ったように前へ進まない。
村上の言葉が頭の中にコダマする。
焦れば焦るほど、カラダは沈んでゆく。

「くそぉ!なんで進まねぇんだよ!」
オレは拳で水面を叩きつけた。

「先輩、焦らなくていいですよ。今日はもう終わりましょう。」
「イヤだ!今度は途中で投げ出したくないんだよ!」
「気持ちはわかります!けど、今のままカラダを庇って泳ぎ続けても、変なフォームで身についてしまうだけです。
ちゃんとしたフォームで泳がないと50メートルなんて無理です。・・・ね?帰りましょう。」

途中でやめたくはなかったが、北山の『雄二を信じて』って言葉を思い出して、酒井のアドバイスに従うことにした。

 

 

金曜日。

ついに村上との賭けの当日を迎えた。

まだ50メートルを立たずに泳げたことは一度もない。

オレは勝負に出た。

村上に近づき、後ろから肩を叩く。

「あ?なんだよ?」
「今日部活が終わったら、駅前のスポーツクラブのプールに来てくれ。」
「最後の悪あがきか?あいにくオレはお前みたいに暇じゃねぇんだよ。」
「来たくなければ来なくていいよ。一応伝えといただけ。」

オレは呆気にとられる村上の前を去った。

ホントは心臓が飛び出そうなほどバクバクしている。
売り言葉に買い言葉とはまさにこのことだ。

泳げないかもしれない・・・。
けど恥ずかしい思いはすでに体験済みだ。
今さらカッコつけても始まらない。


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