「は〜い。じゃあ今から1時間半、ずっと水の中歩いてください。」
酒井がジジババ連中だらけのウォーキング専用のコースをビシッと指差した。
「はぁ!?4日間しかないのに歩いてる場合じゃないじゃん!」
「口答えしない!コーチの命令は絶対!ほら、行った行った!」
手でシッシッと払われる。
じと〜っと酒井を睨んだ後、オレはウォーキング用のコースに入った。
くそ〜っ、酒井の野郎、オレをバカにしやがってぇ!
ムカムカをぶつけるようにガンガン歩く。
まわりのジイサン・バアサンが恐怖に慄いている。
ガンガン歩いていたが、だんだん疲れてきた。
カラダが重くて思ったように前に進めない。
「くそ〜!」
歯を食い縛って歩いていると、酒井が横のコースを平泳ぎでスイ〜っと近づいてきた。
「黒沢先輩、疲れたら水分はちゃんと摂ってくださいね〜。・・・じゃ。」
酒井はそれだけを伝えるとクロールで颯爽と去っていった。
「くそ〜!」
なんだよあれ!泳げるのを自慢してるのか?
けど途中で音を上げるのはくやしいから歩き続けた。
そして1時間半。
「ぜぇ・・・酒井ぃ〜・・・ぜぇ・・・歩いたぞ〜・・・ぜぇ・・・」
息が切れちゃってうまく話せない。
「先輩!水分ちゃんと摂りました?!摂らないとダメですよ!」
「い、今から摂ってくる・・・ぜぇ・・・あと、トイレ・・・」
「トイレも我慢してたんすか・・・」
オレはウォータークーラーでガブガブ水を飲み、トイレに行って酒井の元に戻った。
「水に慣れたところで、次はプールサイドを持ってバタ足の練習です。」
「え〜!まだ・・・」
「フォームもわからないまま泳げるわけないでしょうがっ!ほら、口答え禁止!」
「むぅ〜!」
その後、プールサイドを持ったまま手の掻きと息継ぎの練習・・・で初日は終わった・・・。
「なんだこれぇ!こんなのでホントに泳げるようになるのかよぉ〜!」
「口答え禁止!明日弁当お願いしますね。放課後、校門前で。じゃ、お疲れさまでした!」
酒井はオレに労いの言葉も励ましの言葉もかけず帰っていった。
「あいつ・・・いきなりキャラ変わったな・・・」