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放課後。

美術部の部室。
描きかけの作品があるのに、村上の言葉が頭から離れず、全く描く気になれない。

ハァとため息ひとつ。

部室の隅では2年の酒井が毎度のようにおもしろトークを展開していた。

「この前市民プールでさぁ、子供用の浅いプールに全く人がいなかったから、20往復ぐらい泳いでやったよ〜。」

酒井泳げるのか!

「酒井っ!」
遠くから酒井に声をかける。

「なんですかぁ〜?」
ひょこひょことこっちに向かって来た酒井の足元に、オレは土下座した。

「酒井!頼む!オレに水泳教えてくれ!」
「ちょちょちょちょっと!どうしたんですかいきなり〜?!」
酒井が慌てふためいている。

「頼む!教えてくれ!」
「そ、そりゃあ教えてくれってんなら教えますけど・・・今度の土日にでもプール行ってみます?」
「いや、今。今すぐ教えてくれ!」
「いっ、今ぁ?!なんでそんな急に・・・」
「オレ、全く泳げないんだよ。今週の金曜までに50メートル泳げるようになりたいんだよ。」
「金曜までに50メートル?!む、無理だよ絶対!」
「頼むっ、今日から金曜までの4日間、酒井の放課後をオレにくれ!明日から金曜までお前の弁当作ってやる!だから頼む!」
「顔を上げてくださいよ!わかりましたから!教えてあげますから!」

酒井にカラダを支えてもらい立ち上がる。

「ホントか?!ありがとう酒井!」
「まかせてください!泳ぎには自信があるんで。学校のプールは水泳部が使ってるから、今から駅前の公営のスポーツクラブのプール行きましょう。」

こうして、酒井による水泳の特訓がスタートした。


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