火曜日。
1時間目は体育だ。
今日から水泳の授業が始まる。
チラッと村上の方を見る。
いい体格してんなぁ、さすがサッカー部だな。
それはそうと、今日村上がオレと全く目を合わせてくれない。
なんでだろ?
ピッ!
先生の笛を合図に、順に飛び込んでクロールをする。
ピッ!
あっ。次オレの番だ。
ピッ!
ざぶ〜ん。
水泳の授業は嫌いだ。
だって。
オレ、
泳げないんだもん。
ぶくぶくぶく。
あ〜。カラダが浮いてこない。
前に進まない。
息苦しいなぁ。
オレの遥か上に水面が見える。
どうなっちゃうのかなぁ、オレ。
遠くでざぶんと音がした。
誰かがオレのカラダを抱えてくれる。
お〜、ありがとう。
おかげで助かりそうだよ・・・
保健室のベッドの上で目が覚めた。
あ〜、オレ溺れて気失ったのか。
カラダをゆっくり起こし、ベッドから降りた。
「あ、目覚めた?プールで溺れたところを村上くんが助けてくれたのよ。村上くんにお礼言いなさいね。」
保健室のふとっちょのオバサンが事の経緯を説明してくれた。
ふ〜ん、村上が、ねぇ〜。
「ちなみに人工呼吸したのは村上くん・・・ではなくて私だから。」
「うわぁ〜〜〜!」
オレは堪らず保健室を飛び出した。
オレのファーストキスがふとっちょのオバサンだなんてぇ〜!
オバサンだったらまだ村上の方がマシな気がする・・・って、いやいやいやいや!
今のオレは冷静さを欠いている!
落ち着けオレ!
向こうから村上がツカツカこっちに向かってくるのが見えた。
「村上〜、さっきはごめんな、助けてくれてありがとう。」
「テメェ!」
村上に胸元を掴まれる。
「お前、オレをバカにしてんのか?!」
「ご、ごめん・・・」
村上の勢いにオレは謝ることしかできない。
「オレをなめてんのか?泳げねぇお前がオレにシンクロしろだと?!バカも休み休み言え!」
「・・・ごめん・・・」
「・・・あ、そう言えば、お前昨日“返事金曜まで待つ”って言ったな?
お前が金曜日までに50メートルを一度も立たずに泳げるようになったら、考えてやるよ。
たぶんあの様子じゃ無理だろうけどなっ!」
村上は掴んでいたオレの胸倉からバッと勢いよく手を離すと、ツカツカと去って行ってしまった・・・
そんなぁ・・・