みんなでスポーツクラブへ向かった。
バアサンも、その仲間もついてきてくれる。
オレたちはスポーツクラブのスタッフに事の経緯を説明した。
「急に言われましても貸し切りにはできません。運動のために来られているお客様もいらっしゃいますし。」
「アンタっ!そんな杓子定規なことばっかり言うから子供たちがまっすぐ育たないのよ!融通きかせなさいよ!」
バアサン、すごい剣幕でまくしたてる。
まわりのジジババ軍団も加勢してスタッフに詰め寄っている。
「そう言われましても・・・」
「あっそ!わかったわ!今からマスコミに連絡しますから!
『ここのスポーツクラブは困った高校生たちにプールを貸さない』って報道してもらいます!」
と言って、ジジババ軍団は携帯を取り出し、本当に電話をかけ始めた!
「あ、○○新聞さん?」
「○○テレビさんですか?」
みんな高齢なのにすごいパワーだ・・・
オレたちはただただ唖然・・・
スタッフも対処に大わらわ・・・
スタッフが検討している間に各社マスコミの記者が続々と到着した。
スタッフ、顔面蒼白・・・
報道陣にも詰め寄られてカメラとマイクを向けられると、スタッフは渋々OKした。
「やったぁ〜!ありがとうございます!」
ジジババ軍団に頭を下げて礼を言う。
「お兄ちゃんたち!頑張りなさいよ!」
「はいっ!」
やっと頑張ってきた成果が発表できる・・・
感動に浸っていると、安岡がオレに満面の笑みで言った。
「先輩っ、マスコミ来てるから頑張りましょうねっ♪」
「・・・へ?」
「さっき来たマスコミ、男のシンクロおもしろそうだから取材して帰るって言ってるよ〜」
な〜に〜ぅを〜〜〜!?
無理無理無理無理!
カメラの前なんて想定外だよ!
安岡の言葉とオレの緊張が、他のみんなに伝わっていく。
「つ、つべこべ言ってる暇はねぇぜ。みんな待ってる。悔いの残らねぇように全パワー出し切っていこうぜ!」
村上がみんなにハッパをかける。
「お〜〜!!」
オレたちは男子更衣室でスタンバっていた。
クラスメイト、美術部のみんな、女子高の生徒、ジジババ軍団、安岡のジイチャン率いる古式泳法軍団・・・
客がプールサイドを埋め尽くした。
ドキドキする。
しかも最後の大技・・・一度も立ててない・・・。
オレは手のひらに『人』の字を3回書いて飲み込んだが、喉がカラカラでうまく飲み込めたのかは疑問だ。
曲が流れる。・・・行くぞ!